1万円超の「おもちゃ」なぜ売れる? “完全シークレット”を貫いたメーカーの葛藤、子ども惹きつけた“玩具を愛でる”という原点回帰
■メーカーとしては「プレッシャー」と「不安」、それでもシークレット貫いたワケ
そこまでシークレットを貫くことに、メーカーとしては不安もあったのでは?と聞くと、「正直、ありました(笑)」と率直な答えをくれたのは、タカラトミー・マーケティング課の荒川瑞穂さん。同課長の武田誠さんも、「おもちゃ業界では珍しい」と明かす。 「重要アイテムですし、プレッシャーはありました。ですが、実際に動物が生まれるときと同じように、ウーモの孵化体験は1度きり。どんな子が生まれてくるのかドキドキとワクワクでいっぱいの誕生の瞬間を驚きとともに楽しんでいただきたい。なので、皆様のお手元に届くまでなるべく情報は出さないよう考えました」(武田さん) 最新作『うまれて!ウーモ アライブ』は以前よりさらに進化しており、本物のたまごを孵化させるように抱っこしたり揺らしたりと愛情を注ぐことで、中にいるウーモが自ら殻を割って生まれてくる。殻の割れ方もよりリアルに再現され、本物の動物の誕生さながら。子どもにとっては特別な瞬間となるだろう。 「はじめは一抹の不安はありましたが、必ずヒットすると確信はあって。発売して実際に目にしていただいたことで、確信は現実に変わりましたね」(武田さん) ■1万円超なのにどんどん売れる、200ヵ所以上の体験会で見えた子どもたちのリアル 狙いは、見事的中。発売後、「こんなにリアルだったのか!」という驚きの声とともに、情報が一気に拡散したことによって週を追うごとに販売数は増加。その反響は「予想以上だった」と、武田さんも驚きを隠せない。 「自信はあれど、価格が税込1万1998円とおもちゃとしては高め。クリスマスシーズンでも、よく買われるおもちゃの価格は5000~6000円ですからね。イベント時期でもない10月に1万円を超えるおもちゃの販売数が週ごとに上がっていくのは、市場においてかなり特殊な売れ方だと思います」(武田さん) では、実際ウーモを手にしたユーザーの反応はどんなものだったのか。発売日以降、全国200ヵ所以上で実施した孵化体験イベントで、親子づれのリアクションを見てきた荒川さんはこう語る。 「抱っこしたり、トントン叩いたりとお世話することで、殻の中から心音が聞こえ、孵化の準備が始まります。子どもたちが愛おしそうにたまごを抱きしめる様子や、耳を傾けて中を確かめようとする姿がとても印象的でした。愛情を注いで生命を育む気持ちを味わえるという、ウーモの魅力がしっかり伝わっていると実感しました」(荒川さん) 自らの手の中で愛情を込めて育てたたまごから、生命が誕生する――おもちゃとはいえ、その体験はどれほど子どもたちを惹き込むものだったか。ウーモが殻を割って生まれようとする瞬間には、多くの子どもたちから「頑張れ!」という掛け声が飛んだ。 「アライブには、ユニコーンを模した『パフィコーン』とドラゴンを模した『ドラグル』の2種類があり、それぞれカラーは2通り。どちらが生まれるかは孵化するまでわかりません。実演で、『パフィコーンの紫の子が絶対可愛い』と言っていた子にドラグルのたまごのお世話をしてもらったことがあったのですが、孵化後、その子はもう生まれてきたドラグルに夢中(笑)。自分が愛情を込めて大切に育んだ子が『一番可愛い!』となっているところに、ウーモの意味を感じました」(荒川さん)