高橋まつりさん母「誰もが安心して働ける国に」…手記公表「どんなに時が過ぎても大切な愛しい娘」
大手広告会社・電通(東京)の新入社員だった高橋まつりさんが24歳の時、長時間労働による過労で命を絶ってから、25日で9年となった。母親の幸美さん(61)が手記を公表し、「誰もが安心して働ける国に」と過労死の根絶を訴えた。 【写真】富士登山での思い出の一枚…高橋まつりさんと母
2015年入社のまつりさんは、生きていれば今年で10年目の節目を迎えていた。幸美さんは手記で「充実した人生を生き、将来に夢を描いていたかもしれない」と思いを巡らせた。
電通が過労死の再発防止に取り組んでいることに言及しつつ、「大切なのは、プロジェクトのために睡眠時間を削る社員に対し、会社が何をするべきかを考えること」と指摘。「残業時間が長い社員は、知らないうちに病気になる危険が高いことを絶対に忘れないでほしい」と呼びかけた。
今年で、過労死防止を国の責務と定めた「過労死等防止対策推進法」の施行から10年。長時間労働などで精神疾患を発症する人は後を絶たず、23年度に労災認定を受けた人は過去最多の883人(うち自殺・自殺未遂が79人)に上った。
過労死対策を議論する国の協議会委員を務めている幸美さんは、そうした実態にも触れ、「国は遺族の意見を本気で聞き、対策を見直して」と要望。「誰もが安心して働き、希望を持って人生を送れる国になるよう願い、まつりとともに力を尽くしたい」と結んだ。
美幸さんの手記全文
公表した手記の全文は以下の通り。
まつりがいない9回目のクリスマス。12月はいつも心がざわざわします。言葉で表すのは難しいですが、まつりを助けられなかったあの日が近づくからです。たとえ「電通過労死事件」が人の記憶から消えても、どんなに時が過ぎても、まつりは大切な愛しい娘。一生忘れることはありません。
2015年、まつりは希望を持って電通に入社しました。新入社員研修でアイデアが採用されてラジオで放送されたことや、研修の最後のプレゼンで優勝したことを嬉しそうに電話してきたことが昨日のことのようです。