高橋まつりさん母「誰もが安心して働ける国に」…手記公表「どんなに時が過ぎても大切な愛しい娘」
今年は「入社10年目」。同期入社のみんなは「入社10周年同期会」をしたそうです。在職中の人も退職した人も一緒でした。
もしまつりが生きていたら、参加していたかもしれません。
10年目の社員として、後輩社員のロールモデルになれるように頑張っていたかもしれません。やりがいをもって生き生きと働いて、休日には大好きな人たちと過ごして、充実した人生を生き、将来に夢を描いていたかもしれません。「あんなに頑張って生きていたんだから、絶対に幸せになってほしかった」そう思うと悔しくてたまりません。
まつりが亡くなった後、電通が過労死の再発防止を約束して8年になります。これまで様々な取り組みを行って、2年で残業時間を6割削減したそうです。娘がやっていたデジタル広告の「とてつもなく時間がかかる作業」はAIがやるようになったそうです。制度を整えて、グループ各社で女性活躍推進企業「えるぼし認定」などを取得したそうです。娘がいた頃も制度はありましたが、長時間労働や残業隠し、ハラスメントに苦しんでいる社員が沢山いました。娘の他にも社員の過労死がありました。電通があの頃の社風を変えようという姿勢はわかります。全体的には残業時間を減らすことはできているのかもしれません。今最も大切なのは、プロジェクトのために睡眠時間を削って残業をしたり、休日出勤をしている社員に対して、会社は何をするべきなのか考えることではないでしょうか。残業時間が長い社員は知らないうちに病気になる危険が高いということを絶対に忘れないで欲しい。電通が働く全ての人の人権を尊重した経営を行い、全ての社員が生き生きと誇りを持って働ける会社であることを願って、これからも見守っていきたいと思います。
そして今年は過労死防止法が施行されて10年になりました。娘が亡くなる前年の2014年11月1日、大切な家族を過労で失くした遺族の方々のたゆまぬ努力によって過労死防止法が施行されました。その後、働き方改革が叫ばれる中、残業時間の上限が定められ、労働環境の改善が進んだかのように言われますが、今でも仕事が原因で病気になる人や、過労死する人がいます。特に精神疾患の労災請求は毎年増えて、娘が亡くなった年の2倍以上になっています。国は過労死対策に何がたりないのか。どうしたら過労死がなくせるのか。私たち遺族の意見を本気で聞いて、対策を見直してほしいです。