なぜJRA調教助手らの1億円を超える持続化給付金の集団不正受給疑惑が起きたのか…背景に“黒幕”の存在
競馬界に激震が走った。JRA(日本中央競馬会)に所属する調教助手、厩務員らによる新型コロナ対策の持続化給付金の集団不正受給疑惑がメディアに報じられ、国会では競馬法を所管する農林水産省の野上浩太郎大臣が「返還など厳正な対応を取るように指示した」と答弁するなど波紋が広がっている。 事件は茨城県美浦村と滋賀県栗東市にあるJRAトレーニングセンターで働く調教助手や厩務員らが、レースの獲得賞金に応じて得られる報酬が新型コロナの影響で減少したとして、国の持続化給付金を不正に申請し受け取った疑い。関係者によると「受給者は100人以上」と言われ、総額は1億円以上になる可能性もある。ただJRAでは新型コロナの“巣ごもり”の影響で、逆に売り上げを伸ばしているという背景がある。 持続化給付金の受給条件は収入の減少だ。だが、JRAに所属する調教助手、厩務員は厩舎を構える調教師と雇用関係を結んでおり給与を受け取っている。形態は厩舎によって異なるが基本給が月15万円~35万円、諸手当が2万円~8万円、年2回賞与がある。この点はサラリーマンと何ら変わりなく、この額は新型コロナの影響で減ってはいない。 ただ、通常の給与所得者と違うのは担当馬の成績に応じ、レースで獲得した賞金の一部を「進上金」(獲得賞金の5%)として受け取っている点で、毎年、確定申告をしている。また厩舎によっては進上金の一部をプールし、均等に分配することもあり、G1馬などの活躍馬が多数在籍すれば、全員が年収1000万円突破ということも珍しくない。今回の持続化給付金の集団不正受給疑惑につながったのは、この進上金の変動を利用したものと考えられている。 ある税理士は、「レースの成績によって報酬が増減することから前年同月から半減した、と給付要件を満たしたように見せかけるのは容易だったかもしれない。しかし、彼らは個人事業主ではない。当該月の収入が減ったのは成績によるもので新型コロナの影響ではない」と話す。 だが、こんなワル知恵は、簡単には浮かばない。まして集団で申請するのは異常だ。