やんばるの集落と夜の森を訪れる、沖縄エシカルトラベルのススメ【後編】
この日は、地域の料理家によるやんばる家庭料理のレッスンに参加。疲れた胃腸にもやさしい、地元食材を活かしたシンプルな食事をつくってお重に盛りつけていった。内容はグルクンのムニエル、ドラゴンフルーツでピンクに色づけした豆腐で和えた苦菜、はんだま(水前寺菜)の炊き込みごはん、パパイヤや島ニンジン、昆布などの煮物、ミミガーときゅうりの酢みそ和え、島らっきょうのカツオブシかけというもの。お腹いっぱい食べても、身体も心も軽やかなのが不思議だ。やんばるの山海の恵みに満たされる体験だった。
飛べない鳥「ヤンバルクイナ」を探しに、夜の森へ
日が暮れかけたところで、やんばるの森を訪れるナイトツアー「環境保全型体験ツアーAKISAMIYO」に出発! 森の生態系を学びながらレンジャー(自然保護官)のような体験ができる、注目のツアーだ。
ナイトツアーのもとになっているのは、2011年からおこなわれている林道パトロール。ゴミの不法投棄や珍しい動植物の採取・盗掘などからやんばるを守るために、地域住民が立ち上がった取り組みだ。ツアーではそのモニタリングに参加、やんばるの森の保全と調査に協力できる。
情報が流出すると密猟につながる可能性があるため、現地に到着するまで行き先が明かされないミステリーツアー。夜のやんばるの森を歩きながら、動植物の声や姿をチェックし、GPS機器に登録していく。どこでどのような発見したか記録、蓄積していくことで、密猟のトラップの設置場所や希少動物のいるところを分析できるという。 外来種を持ち込まないように靴底泥を落とし、山中腹の神社で山神様にお祈りをして、いざやんばるの闇に入る。車から山道に向かう途中、天然記念物ヤンバルクイナの泣き声をキャッチ! このやんばるの大スターは、夜行性なのだとか。残念ながら姿は見えなかったが、確かに存在を感じた。すぐさまGPSに登録する。 「足元に注意してくださいね。木の根に引っ掛けて転ばないように! 生きものがいたら知らせてくださいね。野猫や犬は見つけたら、保護して里親を探して引き渡しています。そうしないと野生化して、生態系を壊してしまうんです。やんばるに来ないと見られない大型のシダ、ヒカゲヘゴは、ゼンマイの部分は食べられるんですよ。あっ、ここにザトウムシがいますね。ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』に出てくるクモ親父のモデルになったといわれている生きものです」 妹尾さんの話を聞きながら、森に分け入っていく。やんばるではヘビもカエルも冬眠しないそうで、あちこちからカエルとおぼしき鳴き声が聞こえてくる。見上げると、木々と雲の隙間にいくつもの星がきらめいていた。