〝ぽっちゃりモデル〟合計45kg減量後の今 ダイエット失敗の理由は?「思考の傾向」「貧困や労働条件」
ダイエット失敗には社会の問題も
ダイエットが失敗する理由には、実は個人の傾向だけでなく、社会の問題もあります。ダイエットをするには生活の余裕が必要で、貧困や労働条件の面で余裕がない人は肥満になりやすいのです。 厚生労働省『国民健康・栄養調査』(2019)によれば、肥満者の割合は男性33.0%、女性22.3%であり、<この10年間でみると、女性では有意な増減はみられないが、男性では平成25年から令和元年の間に有意に増加している>とされています。 その背景にあるのが「健康格差」です。これは、性別や人種、地域や社会経済状況(所得・職業・学歴)によって健康状態や保健・医療にアクセスする状況が異なることを指す言葉です。 健康は本人の年齢や体質、行動の影響を受けますが、このうち特に「行動」の選択は、本人の周囲の環境に左右されることが、医学的に知られているのです。 社会経済状況のうち「所得」について、私の例で検討してみましょう。ぽっちゃりモデルをしていたころ、私は仕事のやりがいを重視し、新卒でベンチャー企業に勤務していたため、その給料は同世代の水準を下回る、いわゆる「相対的貧困」の状態にありました。 衣食住に事欠き命が危ぶまれる絶対的貧困に対して、衣食住は足りているが周囲に比べて貧困で、社会で当たり前とされている行動や消費ができにくい「ゆとり」のない状態が、一般的には相対的貧困と定義されます。 新潟県立大学人間生活学部教授の村山伸子さんが代表の研究によれば、年収が低いと主食が炭水化物中心に偏ること、腹囲やBMI、血糖値、中性脂肪値が高くなることが明らかになっています。 では、なぜ年収が低いと健康に影響があるのでしょうか。厚生労働省の研究会で発表された村山さんの資料『社会経済的要因と健康・食生活』では、所得の格差が不適切な食事の量と質や喫煙、多量飲酒や運動不足などのリスク行動につながり、病気に罹患したり、死亡したりすると説明されています。 私の場合も、現実問題として厳しい経済状況の中で会社と自分の成長というノルマを常に意識し、過重労働や長時間勤務をしていたストレスがあり、毎日のように深夜にラーメンを食べる行動、休日に運動をする余裕を失った状態につながっていました。 私のケースでは、何度かの転職を経て、経済状況が改善し、過重労働や長時間勤務が解消されたことで、「過食と運動不足を解消」できるようになったとみることもできます。 社会はもちろん、自分の生活環境を変えるのは、当然、難しいこと。私自身も、45kg減量するまでには、5年以上かかっています。ダイエットを成功させるためには、まず、ダイエットが失敗する理由に目を向ける必要があると言えます。その上で、日々の食事と運動習慣の改善にコツコツ取り組んでいくのがよさそうです。