〝ぽっちゃりモデル〟合計45kg減量後の今 ダイエット失敗の理由は?「思考の傾向」「貧困や労働条件」
肥満者の思考には「傾向」がある
“ぽっちゃりモデル”としてファッションショーに出演するなど、貴重な経験もして、自分の体型をある意味で「ネタ」にしていた当時の私。しかし、ここまでの肥満になると、健康診断では精密検査を勧められ、医療機関では「このままでは命にかかわる」と注意を受けるなど、事態が深刻であることも認識はしていました。 私は「過食と運動不足を解消」するべきだと思いながらも、それができていませんでした。この齟齬は何によって引き起こされるのでしょうか。実は「時間選好率」という言葉で説明することができます。 中央大学名誉教授の古郡鞆子さん・同大経済学部准教授の松浦司さんの『肥満と生活・健康・仕事の格差』(日本評論社)では、肥満者について「時間選好率が高い傾向があることが報告されている」として、以下の傾向を紹介しています。 ※ただし、以下はあくまでも、たくさんの人を対象にした疫学研究からわかった「傾向」です。 <時間選好率が高いということは、今日食べたり、飲んだりして得られる満足度を、将来健康であることの満足度より高く感じてしまうことを指す> 肥満を経験したことのある人ほど、ハッとするのではないでしょうか。これは、未来の利益よりも目先の利益を優先してしまう傾向があるということです。つまり、当時の私にいくら「このままでは命にかかわる」と言っても、実効性に乏しい可能性があるのです。 当時、私は食べたり飲んだりもそうですが、自分の体型を「ネタ」にすることを“おいしい”、すなわちメリットがあると感じていました。それは、会食や飲み会の場が盛り上がったり、それこそ「ファッションショーに出演する」といったことができたりしたからです。 一方で、それにより失われる健康があることには、目をつぶっていました。周囲に「心配だからやせてほしい」と言われると、「わかってるよ」と言い返していましたが、これはウソでなく、減量の必要性は自分が一番よくわかっていたのです。 ここまで太ると、少し歩いただけで息切れして疲れてしまい、ましてや階段などもってのほか。喉が乾いて夜中に目が覚めたり、膝に痛みを感じたりすることもしばしばです。それでも、改善できなかったのは、やはり当時の私にとっての目先の利益を優先してしまったためでした。 ダイエットに悩む人が多いというのは、それだけ「太る」よりも「やせる」方が難しいということでもあります。時間選好率が高いというのは、難しいことの優先順位は下がりがちだということでもあり、人が一度、太るとやせにくいメカニズムの一つでもあります。