【年金世帯の住民税非課税世帯】手厚い優遇措置が5つも!年金の手取りはいくら変わるのか。元公務員がややこしい非課税制度をわかりやすく解説
住民税非課税世帯の年収目安
東京23区を例に、住民税非課税世帯となる年収の目安を見てみましょう。 住民税には所得に応じて負担額が決まる所得割と、課税者全員が負担する均等割があります。住民税非課税世帯となるのは、所得割・均等割どちらも非課税の場合と、所得割のみ非課税となる場合です。 住民税が非課税となる所得金額は以下のとおりです。 〈所得割・均等割どちらも非課税〉 生計を共にする配偶者や扶養親族がいる場合 ・合計所得金額が35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下 生計を共にする配偶者や扶養親族がいない場合 ・合計所得金額が45万円以下 〈所得割のみ非課税(均等割のみ課税)〉 生計を共にする配偶者や扶養親族がいる場合 ・総所得金額が35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+42万円以下 生計を共にする配偶者や扶養親族がいない場合 ・総所得金額が45万円以下 また、年金を受給している人は「公的年金等控除」を受けられます。65歳以上で年間の年金受給額が110万円以下の場合、全額が控除の対象です。 よって、収入が年金のみの場合、単身世帯は年収155万円以下、夫婦世帯は年収211万円以下であれば住民税が非課税となります。 自治体によっては、住民税が課税される収入額が異なる場合があります。自分が住民税の課税対象かどうか確認したい場合は、自治体の窓口に問い合わせてみましょう。
年金世帯の住民税非課税世帯に対する優遇措置5つ
住民税非課税世帯に該当すると、自治体によっては公共サービスで減免や優遇措置が受けられます。優遇措置が適用されるのは、以下の費用やサービスです。 1.国民健康保険料・後期高齢者医療保険料 2.介護保険料 3.医療費 4.教育費 5.介護・福祉サービス それぞれどのような措置が受けられるのか、解説します。 ●国民健康保険料・後期高齢者医療保険料 住民税非課税世帯は、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の減免を受けられます。減免額は、以下の基準額のとおりです。 〈7割軽減〉 ・世帯の所得金額が43万円+10万円×(給与所得者等の数-1)以下 〈5割軽減〉 ・43万円+(被保険者数+特定同一世帯所属者の数)×29.5万円+10万円×(給与所得者等の数-1)以下 〈2割軽減〉 ・43万円+(被保険者数+特定同一世帯所属者の数)×54.5万円+10万円×(給与所得者等の数-1)以下 所得金額に応じて、最大7割の保険料が軽減されます。75歳になったときに移行する後期高齢者医療保険制度の保険料も、同様の減免が受けられます。 ●介護保険料 住民税非課税世帯では、介護保険料の納付額が減額されます。非課税世帯の人が納付する保険料は、基準額の0.3倍~0.7倍の金額です。 ・基準額×0.3(7割減):年金収入80万円以下 ・基準額×0.5(5割減):年金収入80万円超120万円以下 ・基準額×0.7(3割減):年金収入120万円超 基準額の倍率は、年金収入額によって変化します。厚生労働省によれば、65歳以上の全体の約2割が、基準額の0.3倍の保険料の納付対象なのも明らかとなっています。 ●医療費 住民税非課税世帯は、医療費の負担が緩和されます。70歳未満の場合、医療費の自己負担限度額は以下のとおりです。 〈標準報酬月額83万円以上〉 ・25万2600円+(総医療費※1-84万2000円)×1% 〈標準報酬月額53万~79万円〉 ・16万7400円+(総医療費※1-55万8000円)×1% 〈標準報酬月額28万~50万円〉 ・8万100円+(総医療費※1-26万7000円)×1% 〈標準報酬月額26万円以下〉 ・5万7600円 〈市区町村民税の非課税者等〉 ・3万400円 住民税が非課税の場合、自己負担限度額は3万5400円です。超えた分は高額療養費が支給されるため、少ない負担で医療が受けられます。 ●教育費 住民税が非課税の世帯では、教育面での優遇措置が受けられる場合があります。たとえば、日本学生支援機構では、住民税非課税世帯を対象に、大学や専門学校進学時の給付型奨学金の支給や、入学金・授業料の免除などを行っています。年金受給時に子どもが進路選択の時期を迎えるという世帯にとっては、給付型奨学金などの存在は心強いでしょう。 ●介護・福祉サービス 介護や福祉サービスも、住民税非課税世帯には優遇措置が存在します。介護サービスでは、サービスの利用料金が自身の負担すべき上限額を超えた場合に、超えた分が介護保険から支給されます。たとえば、住民税非課税世帯の施設入所者は、収入状況によって1日あたりの施設利用料の負担限度額が減免されています。 また、一般的に9300円~3万7200円かかる障害福祉サービスの利用も、住民税非課税世帯であれば負担なしで利用可能です。