トラックのタイヤが外れる脱輪事故が10年前の10倍以上に増加! 急増した原因と期待される画期的アイテム
脱輪をセンサーで監視する装置が登場
一般ドライバーにはあまり馴染みがないかもしれないが、運輸・輸送業界ではトラックの脱輪(脱落)事故が頭の痛い問題とされている。国土交通省によると、大型車の脱輪事故が2011年から増加傾向にあるという。2022年の車輪脱落事故発生件数は、確認されているだけで140件に及ぶ。これは、2011年の約12倍だ。 【画像】脱輪をセンサーで監視する東海理化の「天護風雷」の画像を見る そもそも、脱輪事故はなぜ起きるのだろうか。簡単にいえば、それはナットが緩んで外れるからだ。スタッドボルト(ハブにホイールを取り付ける際に使用するボルト)が折れることもあるが、それはナットが緩んで無理な力がかかったとか、ボルトに疲労や欠損があった場合である。要するに、脱輪事故の多くはナットの緩みに起因しているということなのだ。 では、なぜナットが緩むのか。一般にホイールを取り付ける際の作業ミスと思われがちだが、それは主因とはいえない。なぜなら、ホイールを取り付けるときには専用工具を使用して、規定のトルクで締め付けているのが当たり前だからだ。 現在、専門家が指摘している原因はふたつ。ひとつは「初期馴染み」である。これはホイール取り付けの際に、ナットが錆びや微細な異物・傷などを一緒に締め込み、その後に走行することでこれらが馴染んででくるとナットとボルトに隙間が生じ、振動などで緩んでくるという現象だ。スタッドレスタイヤに交換したあとの12月に、脱輪事故が多いことがこれを裏付けているという。 もうひとつは、ナットがJIS規格(日本規格)からISO規格(国際規格)に変わったことだ。JIS規格のときには、車両左側のナットは左締め(逆ネジ)になっていた。なぜなら、走行の負荷でネジが閉まるようになるからだ。しかし、ISO規格はすべて右締め。ただ、この点に関しては公式な検証結果がないので、因果関係は証明されていないことになっている。 いずれにせよ、脱輪事故は増えているのだから、防止のために何らかの手を打つ必要がある。大切なのは日常点検をしっかりと行ない、日頃からナットの緩みをチェックすることだ。また、増し締めしたボルトとナットにペイントで印をつけ、そのずれを確認するという方法もある。同様の効果が期待できる市販品に、ホイールナットマーカーというグッズがある。これをナットに装着するのもよいだろう。 ただ、ペイントやホイールナットマーカーは「ポカヨケ」のようなもので、最終的には人が目で確認しなければならない。見落とす可能性が皆無とはいえないだろう。そこで、脱輪をセンサーで監視する装置が登場したわけだ。この装置は「ナットキャップセンサ」と「受信機兼表示器」で構成された、東海理化の「天護風雷」という画期的なシステムである。 「ナットキャップセンサ」は、ナットに被せてロックをするだけで装着が可能。内蔵された加速センサーで、ナットの緩みを検出する。このデータは特定小電力無線局(発射する電波が著しく微弱な無線システム)で「受信機兼表示器」に情報が伝達される。電源は電池を使用し、約1年程度の寿命があるのでメンテナンスにも手がかからない。 「受信機兼表示器」はキャビン内のダッシュボードなどに取り付け、USBコード(Type C)でシガーソケットなどから電源を得る。「ナットキャップセンサ」がナットの緩みを検知(角度にして90°のずれが発生)した場合、この装置がLEDの発光とブザー音で、異常をドライバーに知らせてくれるのだ。 取り付けが簡単で車種を選ばないという簡便性・汎用性や、走行中に異常が起きても検知可能な判別性に優れており、新たな脱輪予防の切り札になるのではないかと期待されている。
トラック魂編集部