妻を亡くした70代男性「妻を忘れてしまいそうで怖い」 専門家と考える、これからを生きていくための心のよりどころ
◆妻の声や手の温かさを忘れてしまうのが怖い 時間がたつにつれ、日々の生活に追われて、亡き人のことを思い返すことも少なくなりがちです。 亡き人の記憶が薄れていくことに不安を感じる人もいます。 「亡くなった妻の声や、つないだ手の温かさを忘れてしまいそうで怖いんです」 このように話されたのは、奥様を突然に亡くされた70代の男性でした。 「一緒に過ごした時間や思い出が、本当のことだったのか夢だったのかわからなくなってしまうこともあるんです」 少し悲しそうに、こう気持ちを打ち明けてくれました。 そこでこの男性は、亡き奥様の写真をたくさん、目に見えるところに飾ってみました。 そうすると、一緒に過ごした時間は夢ではなく、妻はたしかにいたんだなと思えるようになったそうです。
◆遺された人にしかできないこと 亡き人のために今できることはかぎられていますが、思い出を大切にすることは遺された人にしかできないことの一つです。 思い出を大切に整理していく時間は、亡き人と過ごしているかのような時間に感じられます。 ときには、あなたを苦しめている感情が少し軽くなることもあります。 また、亡き人を知る人と、過去の楽しい記憶を語りあうことも、つらい気持ちを和らげてくれるかもしれません。 亡き人と過ごした時間や思い出の品は、かけがえのないものです。 宝物のような思い出は、これからを生きていくための心のよりどころになるでしょう。 POINT 亡き人と過ごしたかけがえのない時間は、ずっと消えない ※本稿は、『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
坂口幸弘,赤田ちづる