妻を亡くした70代男性「妻を忘れてしまいそうで怖い」 専門家と考える、これからを生きていくための心のよりどころ
大切な人との死別をはじめとする「喪失」を体験した人の悲しみを癒やすサポートを「グリーフケア」と呼びます。関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」の坂口幸弘さんと赤田ちづるさんは、大学で教育や研究をするかたわら、病院や葬儀社と連携してグリーフケアの支援活動を行っています。今回は、お二人の著書『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』から、死別と向き合い、再び歩き出すためのヒントを一部ご紹介します。 【書影】大切な人を亡くしたあなたへつづる、再び歩き出すための28のヒント。坂口幸弘、赤田ちづる『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』 * * * * * * * ◆亡くなった父の誕生日にはケーキを食べる 亡き人の誕生日や記念日をお祝いしたり、命日を大切に過ごしてみたりするのもいいと思います。 父親を亡くした40代の女性はこう話されていました。 「亡くなった父の誕生日には、これでもかというくらいたくさんのケーキを食べるんです」 女性が幼い頃、父親は自分の誕生日なのにいつも彼女の好きなケーキを買ってきて、好きなだけ食べさせてくれていたそうです。 「お誕生日おめでとうと書かれたプレートも、私が食べていたんですよ。母がよく怒っていました。だから、父がいなくなった今も、父の誕生日には、父が私にしてくれたように過ごすことにしています。父に会いたくて、さみしくて眠れない夜もあるけれど、この日だけは父と過ごした時間を思い出して、少しおだやかな気持ちになれます」 ほほ笑みながら、思い出話を聞かせてくれました。 この女性のように、亡き人を思い浮かべながらひとりの時間を過ごすのもいいでしょう。
◆過ごした日々の記憶をたどる また、亡き人の生前を知る人や信頼できる人と一緒に、写真やゆかりの品を見ながら、思い出を語りあうこともいいと思います。 一緒に過ごした日々の記憶をたどることをとおして、亡き人の存在を身近に感じられることがあります。 亡き人を想う時間をじっくりと作ってみるのもいいと思います。 今できる方法、思いつく方法で、亡き人とともにある時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。 大切な人と過ごした幸せな時間を思い起こすことによって、言葉にならないさみしさを覚えることもあるでしょう。けれどもこの女性のように、心が少しあたたかくなることもあります。 人によっては、心地よい記憶ばかりではないと思いますが、亡き人が自分に与えてくれたものを思い返すなかで、おだやかな気持ちを抱くことができるかもしれません。