注目の男子100m優勝候補筆頭は20歳の栁田大輝、直近のレースで追い風参考記録ながら9秒台!【日本選手権プレビュー】
翌月の世界陸上ブダペストでも、ある程度はやりたい動きができた。予選も準決勝も同じ組にスタートが世界一とも言われるクリスチャン・コールマン(28、米国)がいた。先頭には立てなかったが準決勝では10秒14と、初の個人種目出場としては合格点のタイムで走っている。 国際大会に強い理由を「海外では自分のことを第一に考えて行動しています」と、栁田は自己分析する。「外国人選手にはそういう人が多いので。仕事でそれをしたら変な目で見られるかもしれませんが、陸上競技ではある意味重要なことだと思います」。そうしたメンタルもあり、栁田は試合経験やトレーニングでの成長をそのまま国際大会で出すことができる。日本選手権で好成績を出せば、パリ五輪でもそれに見合った走りをするはずだ。 ■9秒97は数字よりも走りの内容を自己評価 昨年と同様に今季前半も、栁田は課題を残した試合が続いていた。個人種目初戦のバトンルージュは「追い風(1.7m)に助けられた」し、5月のGGP(1位・10秒21)とダイヤモンドリーグ・ユージーン大会(10秒26)は、スタートが上手くいかなかった。 その課題がクリアできたのが6月15日の日本学生個人選手権だった。追い風参考記録だが準決勝で9秒97をマークした。GGPでもたついた序盤がウソのように、スムーズに加速できていた。本人は「最後の20mは追い風に負けて崩れた」と言うが、客観的には危なげなく逃げ切った。 「やりたかったスタートができて一気に前に出られたので、これはイケると思いました。追い求めていた数字をひとつ出せたので、追い風参考とはいえ大きいです。風がない状態で同じ動きを再現できるように練習をやっていけばいい。しっかり疲れを抜いて、また練習をちょっと重ねて、日本選手権に向けて一段階、二段階、体の状態を上げていきたいです」 栁田にとっては記録よりも、「やりたい動きができれば9秒台は出る」ということが実感できたことが収穫だった。その動きをするためにユージーンから帰国後に、しばらく軽めにしかできていなかったウエイトトレーニングを、「翌日に筋肉痛になるくらいの強度」で行った。