中古不動産投資の主流「オーナーチェンジ」だが…物件選びで見落としがちな「落とし穴」
不動産投資のリスクは対策ができる
不動産投資における代表的なリスクは空室、滞納、家賃下落、金利、災害といわれています。資産運用はいかにリスクをコントロールできるかが受け取るリターンの重要なファクターです。 金利、災害については事業環境リスクや天変地異リスクといわれ、個人がコントロールできるものではなく、不動産に限らずあらゆる金融商品にも同様のリスクがあり、リスクプレミアムに含まれるため考慮する必要はありません。 一方で、それ以外の空室、滞納、家賃下落のリスクは、過去事例や管理の履歴などの情報を知ることで対策を講じることが可能です。 先に述べたようなオーナーチェンジの物件では、そのような情報を正確に入手できないまま融資を受けて購入することはあまりにもリスクが高過ぎます。 長期の資産形成に向いている不動産投資だからこそ適切なリスク管理と戦略的な計画が求められますが、安定した投資を行うには可能な限り詳細な情報を収集する手段を講じることが重要です。現地視察、過去のメンテナンス履歴の確認、信頼できる不動産業者のサポートを受けるなど、物件の状態や市場の状況を把握したうえで数年後も価値が維持され続ける物件を選ばなくてはなりません。
法改正によるインスペクション説明の義務化
入居者が賃貸住宅を選ぶ際に重視する点として、「住宅の広さや間取り」が81.7%、「家賃・管理費の負担水準」が81.0%と生活の基本的な水準に次いで、「住宅の状況(いたみ・劣化等)」が70.9%、「住宅の維持管理」が67.3%と、物件の管理状況についても7割近くが高い関心度を持っていることがわかります※。 数年前から大量生産型の画一的なデザインは選ばれなくなり、アクセントクロスや最新設備など一部分のみを新しくして「リノベーション済み」と謳ったり、空室を補填するために家賃を調整したりするなど、表面的な改善を行っている物件や管理会社が多くなっています。しかし、本当に怖いのは目に見えない老朽化やトラブルです。 日本は新築至上主義の考えがいまだ強く、今後増え続ける中古不動産取引を活性化させるためには、物件の状況や品質についての透明性を高めなければなりません。そのような取り組みの一環として、2018年の法改正でインスペクション(建物状況調査)の説明が義務化されました。 また、2020年4月の民法改正で「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと変わったことで、売主負担が増え、より一層不動産会社の説明責任が重くなりました。こうした背景もあり、物件の劣化状況の調査について少しずつ理解が深まっていますが、あくまでも説明や斡旋の義務であって、実施の義務ではありません。