「半端ない」ホーム感に包まれるグラウンドに轟いた歓喜の歌声!鹿児島城西は岡山U-18に逆転で競り勝って笑顔と涙のプレミア初白星!
[9.29 プレミアリーグWEST第16節 鹿児島城西高 2-1 岡山U-18 鹿児島城西高校 半端ない人工芝サッカー場] 【写真】「金髪美少女」「一段と可愛く…」「アカンやつ」元なでしこ岩渕真奈さんのモデル姿に称賛殺到 それはピッチ上の選手だけではない。応援エリアで声を嗄らしたチームメイトと他の部活の仲間たち。チームスタッフ。学校関係者。スタンドに詰め掛けた保護者や地域の方々。試合前のサッカースクールに参加した子どもたち。会場の雰囲気を盛り上げたダンス部にチアリーディング部、吹奏楽部。このグラウンドにいたすべての人たちが、大きな笑顔に包まれる。やっぱり、勝つって最高だ。 「もうみなさんがずっと前期から応援してくださっているのに、結果が付いてこなくて、応援している意味を考えられたこともあったんじゃないかなと思うんですけど、それでもここまで信じて応援してくれたので、みんなで勝利を喜べて良かったです!」(鹿児島城西高・藤吉純誠) ホームグラウンド一体で掴んだ、笑顔と涙の歴史的なプレミアリーグ初勝利!29日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第16節で、12位の鹿児島城西高(鹿児島)と10位のファジアーノ岡山U-18(岡山)が対峙した残留争い直接対決は、岡山U-18がMF磯本蒼羽(3年)のゴールで先制したものの、U-17日本代表のFW大石脩斗(2年)とDF福留大和(3年)が得点を重ねた鹿児島城西が見事な逆転勝利。リーグ戦14試合目にして、念願の今季初白星を手繰り寄せている。 「久しぶりのホーム戦だったので、入りは良くなかったですよね」と新田祐輔監督が話したように、9月に入って2試合の延期を強いられたため、鹿児島城西にとっては実に2か月ぶりとなる後半戦初のホームゲーム。いつも通りスタンドには少なくない観衆が詰めかけていたものの、双方の立ち位置を考えても負けられない一戦だけに、試合は慎重に立ち上がる。 ファーストチャンスは鹿児島城西。20分。MF野村颯馬(2年)がMF重盛響輝(2年)と交わしたワンツーを経て、MF柳真生(3年)が枠へ収めたシュートは岡山U-18のGK来海良宣(1年)がキャッチしたものの、「岡山のプレスの掛け方を考えて、今日はちょっとボールを回そうと思っていました」という指揮官の言葉通りに、スムーズなパスワークからフィニッシュまで。27分にも重盛のフィードから巧みに反転したFW別府拓眞(2年)が打ち切ったシュートは、岡山のディフェンスリーダーを務めるDF川上航生(3年)のブロックに遭うも、惜しいシーンを創出する。 ところが、スコアを動かしたのはアウェイチームのナンバー10。30分。MF藤田成充(3年)が刺したパスのこぼれを左サイドで拾った磯本は、鋭いカットインから右足一閃。完璧な軌道を描いたボールは、文字通りゴール右スミへ突き刺さる。個の力が煌いた、まさにゴラッソ。チームファーストシュートで岡山U-18が1点のリードを奪う。 漂い出した嫌な空気を切り裂いたのは、「今日はチームとしても勝たないといけない試合だったので、絶対に点を決めようと思っていた」というホームチームのナンバー9。36分。DF當眞竜雅(3年)のフィードに走った大石は、相手GKともつれながらも粘り強く収めたボールを、ゴールネットへ流し込む。「最高でしたね。言葉じゃ表せないです。『入った!』って感じでした」と笑ったエースは、これがプレミア初ゴール。1-1。鹿児島城西がスコアを振り出しに引き戻して、前半の45分間は終了した。 「『とりあえず自信を持ってやれ』ということは、ハーフタイムに監督から言われました」とキャプテンを任されているGK藤吉純誠(3年)も話した鹿児島城西が、入れたスイッチは1人目の選手交代。11分に奮闘したMF添島連太郎(3年)に代えて、長身FWの浮邉泰士(2年)を投入して、前線に置いた明確なターゲット。 13分に柳の左ロングスローを浮邉が合わせたヘディングは、DFをかすめて左ポストを直撃。當眞も「後半は前に大きい選手が入って、前で収められるシーンが増えたので、そこが大きかったと思います」と言及した通り、大石と浮邉の2トップはセットプレーの高さも含めて、相手に脅威を突き付ける。 一方の岡山U-18はロングスローを続けて入れられ、やや劣勢を強いられる中で、19分には決定機。MF南稜大(3年)、磯本と繋いだボールを、途中投入されたばかりのFW安西来起(1年)は枠へ収めるも、ここは藤吉がファインセーブで回避。さらに26分にはセットプレーから南が、28分にはMFミキ・ヴィトル(3年)のクロスから安西が、どちらもヘディングまで持ち込むも枠外。次の1点を引き寄せ切れない。 狂喜の主役は、確かな得点感覚を備えた“元フォワード”の右サイドバック。33分。MF常眞亜斗(2年)が左から蹴ったFKはファーサイドへ。大石が叩いたヘディングは右ポストに弾かれたものの、こぼれ球に誰よりも早く反応した福留が、執念でボールをゴールへねじ込む。「脩斗がヘディングした瞬間に、『これは自分のところに来るかも!』と思ったら本当に来たので、飛び込むだけという感じでした」(福留)。2-1。逆転。沸騰する応援席。鹿児島城西が一歩前に出る。 初めての勝点3獲得を目前に控えたホームチームは、極めて冷静だった。「自分が安定したプレーをすれば味方に伝染していくと思うので、落ち着いたプレーをするのとコーチングすることは意識していました」(藤吉)「インターハイの決勝も最後に失点して負けてしまったので、『絶対集中して、前に、前に』という感じでした」(大石)「前の選手が身体が強いのはわかっていたので、とりあえず前に入れたら勝ってくれるだろうということで、少しでもゴールからボールを離そうと思っていました」(當眞)。相手の攻撃を1つ1つ丁寧に凌ぎ、時計の針を着実に進めていく。 アディショナルタイムの5分も過ぎ去ると、待ちに待った試合終了の笛がグラウンドに響き渡る。「『もう、やっとだ……』みたいな。『終わった!』みたいに安心しました」(大石)「もう、ホッとしました。やっと勝てたので、安心しましたね」(當眞)「もう、なんか、真っ白になるというか、力が抜けるというか、内からこみあげてくるものがあって、凄く嬉しかったですね」(藤吉)「嬉しかったです。それしかなかったですね」(新田監督)。第16節にして、とうとう掴んだプレミアリーグ初勝利。試合後のグラウンドにはいつまでも、いつまでも、笑顔で奏でる歓喜の歌声が轟いていた。 「相当凄いですね。他のアウェイに行った時より、相手もアウェイを感じると思いますし、自分たちとしても凄くやりやすくて、メチャクチャありがたいです」。藤吉は自分たちが戦うホームグラウンドの雰囲気について、こう語る。試合中は吹奏楽部の演奏が、チアリーディング部のダンスが会場を彩り、試合前のサッカースクールで選手と一緒にボールを蹴っていた小さな子どもたちも混じった応援団は、大きな声援を送り続ける。 「みんなが声を出してくれて、ちょっとプレーが切れた時に周りから声を掛けてくれて、それが励ましになってとてもやりやすいですね。まあ、選手権みたいな感じで、ちょっと緊張するんですけど(笑)」という當眞の素直な感想も微笑ましい。会場入りの際に岡山U-18を率いる梁圭史監督が「今日は声が通らないと聞いてきました」と話していた通り、このグラウンドを包み込むのは、プレミア屈指のホーム感だ。 初勝利の感慨を問われた新田監督が、真っ先に発した言葉も印象深い。「我々はこうやって盛り上げて試合をするので、見に来てくれるあの人たちが早く喜んでくれればなと思っていたんですけど、それが負け続けて、また応援に来てもらってとなると、自分自身もちょっとトーンダウンするじゃないですか。だけど、それでも諦めずに運営をするのがオレらのいいところで、早く応援に来てもらっている人たちに応えたいと思っていたので、やっと応えられて『ああ、良かった……』という感じですね」。 ようやく手にした1つ目の白星。ただ、これをさらに積み重ねていかなくては、この最高のステージにとどまり続けることは叶わない。藤吉は改めて携え直した覚悟を、力強く口にする。 「去年の先輩方がプレミアリーグに上げてくれたのに、自分たちの力のなさを感じて、前期は1勝もできずに、他のチームは勝点3を積み上げていって、離されていく感じだったんですけど、夏に辛抱して頑張った甲斐があったかなと思います。やっと初勝利が獲れたので、この嬉しい気持ちを忘れずに、ここから流れに乗って、勝点を落とさずに残留を目掛けていって、選手権では必ず県で優勝して、全国に出ます!」 『日本一応援される選手・チームを目指せ』というスローガンを掲げた、薩摩の蒼き野武士集団が目指すのは、地域に根差した唯一無二のサッカーチーム。まさに“半端ない”ホームの後押しは、間違いなく最高のアドバンテージ。笑顔と涙の歴史的なプレミアリーグ初勝利を掴んだ鹿児島城西の反撃は、ここからがいよいよ本番だ。 (取材・文 土屋雅史)
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