覇権アニメ最有力の『ダンダダン』をレビュー! こういうのが見たかった……俺たちの本能(リピドー)をぶち上げる快作アニメが登場!【アマプラおすすめアニメレビュー】
『ダンダダン』をレビュー:サイエンスSARUの野性的なアニメーションとの相性が抜群!
今回TVアニメ『ダンダダン』の制作を担当したのは、アニメーション制作会社のサイエンスSARUですが、筆者としてはサイエンスSARUの持つ独特の表現スタイルと原作のスタイルが見事に合致した組み合わせだと感じました。本能を刺激する動物的な動きや、激しくもどこかリズミカルで軽快なバトルシーンなどは圧巻で、原作との相性の良さを感じずにはいられません。 サイエンスSARUと言えば『ピンポン THE ANIMATION』や『映像研には手を出すな!』、『夜は短し歩けよ乙女』『犬王』など数々の名作アニメを手掛けた鬼才・湯浅政明監督を一番に思い浮かべる人は少なくないはず。本作『ダンダダン』は山代風我監督が担当していますが、湯浅監督ならではの演出も幾分か受け継がれているような印象を受けました。 特にオカルンが変身して超高速で走るシーンなどは「湯浅走り」と言いたくなるような特殊なフォームで表現されていたように思われます。地面と背中が平行になるくらい極端な前傾姿勢で手足をしならせながら走るという、まるで四足歩行の動物が走る時のような奇妙なフォームだったと思います。 あえて四足歩行的な走り方にすることで、人間ではない何か(獣)になった瞬間を表現しているものと思われますが、オカルンも通常時は姿勢を伸ばし人間的な走り方をしていたのが、変身後は前傾姿勢の湯浅走りになっていたと思います。 2足歩行と4足歩行で、人間と獣の動きを分けるスタイルは、例えば湯浅監督が手掛けた『DEVILMAN crybaby』における通常時の主人公・不動明とデビルマンとして覚醒後の状態で走り方を分ける表現方法と通底するものがあり、こうした表現方法は本作『ダンダダン』にも生かされているものと推察されます。 『ダンダダン』は本能に訴えかける野性味あふれるスタイルの作品ですから、四足歩行のような動物的な湯浅走りとの親和性は高いように思います。 さらにこうした軽やかな動きに、牛尾憲輔氏の軽快な音楽が加わることで、シリアスなバトルシーンでありながらも、オカルンやモモ、宇宙人や幽霊が戦いながら何かのダンスを踊っているかのような可笑しさが伝ってくるのも魅力的なポイントです。 劇中に踊りの要素が出てくるのは湯浅監督の特徴の1つですが、軽快な演出とピッタリ合う牛尾氏のダンサンブルな音楽も注目したい要素です。牛尾氏と言えば『ピンポン THE ANIMATION』で音楽を担当したことでも知られ、卓球の動きを踊りのように表現する湯浅監督の演出に、思わず足が動き出すようなリズミカルな音楽を組み合わせたことで、最終的にはダンスを見ているかのように楽しめる独特な卓球シーンに仕上がっていました。 こうした獣のような動きと、リズムを取りたくなるような牛尾氏の音楽が相まって、シリアスなはずなのに敵と味方がギリギリの攻防戦の中で、じゃれ合っているようにさえ見える『ダンダダン』ならではの奇妙な映像作品になっているように思います。 こうした演出と音楽によるテンポの良い作劇は『ダンダダン』が持つキャラ同士の丁々発止のノンストップコント(あるいは漫才)的な掛け合いとも相性は抜群。演出や音楽などサイエンスSARUが培ってきたあらゆる要素が、こうした会話劇も含めた『ダンダダン』の表現と見事に相乗効果を発揮しているように思います。観客の本能をくすぐる、まさに今期覇権アニメ最有力の1本に仕上がっていると言えるのではないでしょうか。
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