スタイリスト・原由美子さんとする「スタイル」の話
着る、手放す…服との関係
懐古するだけでなく、いつだってリアルな動きを追う。新著内「クローゼット」と題された章では、女優・高峰秀子との対談をきっかけに「服を着続けること」を考えながら、昨今の服飾業界の消費サイクルへの懸念も滲ませる。インタビュー時も、持ち物としての服との付き合い方を伺ってみた。 「私も断捨離の本などを読んで3回ほどやってみました。でも、やはり後悔したこともありますね」と苦笑いする。 「『あの服、着られたな』と。私の場合は、流行というよりも、着続けられるものを持とうとしていました。新しいものももちろん好きだけれど、似合うまでに時間がかかるというか。自信が持てないんですね。だから、服が自分に馴染むまでに時間がかかるし、着ているうちにじわじわと好きになることが多い。そういうふうに時間をおいた上で、やはり着ないとなったものは、人にあげたりしていました。 〈コム デ ギャルソン〉のごく初期の頃のジャケットなどは、悩みに悩んで、京都服飾文化研究財団(KCI)に寄贈。でも、今『着たいな』と思うんですよ。その時は歳を取ったら着ないだろうと決めつけていたのですが、現在のこのグレーの髪で着てみたい。〈イヴ サンローラン〉の日本1号店で求めたケープも、もろ流行のものだったので照れながら着て、結局KCIへ。けれど、あの時代には最先端で目立つ服に見えたのに、今振り返るとわりとベーシックだった。その頃は照れもあって気分よく着る余裕はありませんでしたが、今なら違うかもしれません。だから、貸していただけたらな、なんて(笑)。本当に、ときの流行りがのちにどう見えるようになるかは、わかりませんね」 「だから、やはり着物はすごい」と、和装スタイリングも手がける原さんならではの視点で話が広がる。 「同じ紋様や型がずっと受け継がれている。老若男女がほぼ同じかたちを着て、色と着方だけで変化がつく。平らにできるから収納もシンプル。最期は土に還る素材だけ。着物文化を残さなくてはいけないと強く思います」