ひろゆきのマネをして「それってあなたの感想ですよね」と口にする子どもはどういう目に遭うのか
ひろゆき氏は現代のトリックスターの一人といえる存在だ。その影響力は特に若年層や子どもには絶大なものがあるようで、彼の物言いやロジックをそのままマネする者も珍しくないという。 【写真を見る】「論破」といえば思い浮かぶ、もう一人の有名人……
「部屋が汚いから片付けなさい」 「汚いというのはママの感想に過ぎないよね」 言い返されて、ムッとしても体罰は厳禁の時代、頭をたたくこともできず……そんな悩みを抱える親もいる。 子どもが減らず口を言うのは今に始まったことじゃないだろうと受け流せる人もいるだろうが、教育の現場では「ひろゆき的」な思考や物言いが幅を利かせていることで頭を抱えている当事者がいるようだ。 福島市で塾を経営する傍ら、社会批評を中心に執筆活動に取り組んでいる物江潤(ものえじゅん)さんもその一人。物江さんは、「挑発的な物言い」「過剰なエビデンス主義」「旧来の規範の軽視」といった「ひろゆき氏的な思想」がなぜ若者を魅了するのか、「論破」を是とする思想は正しいのか、という問いに新著『「それってあなたの感想ですよね」 論破の功罪』で正面から向き合っている。 いま教育の現場にどのような形で「ひろゆき氏的な思考」がまん延しているのか、そこに物江氏が違和感を覚える理由は何かについて述べた部分を見てみよう。(以下、同書をもとに再構成しました) ***
論破とは「相手をいらつかせること」
「それってあなたの感想ですよね」 「なんかデータってあるんですか?」 ついに、この言葉を投げかけられてしまいました。ひろゆき氏に始まる、心をザワザワさせる挑発的な物言いは若者に大うけし、全国の小中学生が親御さんや先生にぶつけていることは知っていましたが、まさか当塾で耳にするとは思いもしませんでした。しかも、この言葉を発した生徒に対し「論破」の意味について尋ねてみたところ「相手をいらつかせること」と答えが返ってきたうえに、データに至っては「意味は分からない」とくれば、どうにもこうにも脱力せずにはいられません。親御さんや学校の先生方の苦労がしのばれます。