「子どもがネットで何を検索したか、学校は把握できます」 学習用デジタル端末の新機能は有用?プライバシー侵害? 生徒の悩みも性的指向も浮き彫りに
2023年6月19日、東京都世田谷区議会議員の上川あやさんはある「決意」を固めていた。この日開かれる区議会の文教常任委員会を巡り、不穏な情報を聞いていたためだ。 「全校生徒の投票先、実は〝筒抜け〟になってます」生徒会選挙で驚きの事実 「投票の秘密」の侵害、教育デジタル化が招く
「世田谷区が、子どものプライバシーを侵害しかねない取り組みを提案するようだ」 事実であれば「何とかして止めないといけない」。 委員会が始まると、はたして区教育委員会の担当課長が、10人ほどの区議を前にこんな話を切り出した。 「小中学校4校で、新たなフィルタリングソフトを試行的に導入したいと考えております」 フィルタリングソフトとは、アダルトサイトや自殺関連サイトなどを見られないようにするものだ。小中学生が使う学習用デジタル端末の多くに導入されている。問題は、課長が今言った「新たなソフト」に搭載されている機能だ。それを使えば、子ども一人一人がインターネットで何を検索し、何を見たかという履歴を、学校側が細かくチェックできるという。 担当課長の説明が終わると、上川さんはこう問いかけた。 「検閲めいていませんか」 近くに座っていた区教育委員会のトップ、渡部理枝教育長の顔色がさっと変わったようにみえた。(共同通信=小田智博)
▽個人の内心に関わること 委員会で上川さんは、性的少数者の子どもを例に説明を始めた。 「LGBTの生徒は、親、あるいは学校の先生のことも信用できない。自分のセクシュアリティー(性の在り方)が公言されてしまうと、教室にも、家庭にも居場所を失う可能性があるから」 性的少数者への偏見は依然根強い。保護者や先生であっても、味方になるとは限らないというのは、残念ながらその通りだろう。 上川さんは続ける。そうした子どもたちは、自身の性的指向や性自認に関する情報を得ようと、ネット検索をすることもあるはずだ。先生や教育委員会がその履歴も見てしまうことが、果たして認められるべきなのか。 「ケアレス(軽率)に、個人の内心に関わることを把握されようとしていると感じる。いかがですか」 ▽方針撤回 上川さんは2003年、トランスジェンダーであることを公表して世田谷区議に初当選し、現在6期目。性的少数者の権利擁護への関心はとりわけ高い。