「子どもがネットで何を検索したか、学校は把握できます」 学習用デジタル端末の新機能は有用?プライバシー侵害? 生徒の悩みも性的指向も浮き彫りに
▽「子どもの動向を知りたいのは自然」 ところで、検索履歴を閲覧する機能は、どうして付けられているのだろうか。アイ・フィルターを販売するデジタルアーツ社を訪ねた。 マーケティング部の担当者によると、アイ・フィルター自体は全国の市区町村教育委員会の4割強に導入されている(昨年9月時点)。本来のフィルタリング機能の充実はもちろん、端末を利用できる時間帯を細かく設定できるなど、教育現場のニーズに応じた機能を次々と取り入れているという。子どもの検索履歴をチェックできる機能も、その一つだ。 この機能を付けたのは2022年春のこと。新型コロナウイルス禍もあって小中学生一人一人に学習用デジタル端末が配られ、利用が本格化する中で、教育現場から要望が寄せられ、それに応えるために付けたという。 履歴を閲覧できる人の範囲は教育委員会で設定できる。教育委員会の担当者のみとするケースもあれば、先生一人一人に権限を与える自治体もあるそうだ。各地の教育委員会からは、次のような歓迎の声が寄せられている。
「重大な事件や事故を未然に防げるのではないか」 「自殺や犯罪などの有害サイトやSNSによる誹謗中傷は、身近に潜んでいる危険。子どもたちを被害者にも、加害者にもしないために、止められるのが大事」 「現場の教員が安心して情報通信技術(ICT)を活用できる」 デジタルアーツ社の担当者はこう語った。 「子どもたちのネット上での動向は見えにくい。それを知りたいというのは、割と自然なことではないか」 プライバシーに関する懸念をどう考えているのか。 「重要な論点だと思う。だからこそ、機能のオンオフは、教育委員会や学校で選択できる」 つまり、現場の判断に委ねているということだ。 ▽自殺をほのめかす履歴 実際に検索履歴を見ている教育委員会では何が起きているのだろうか。 東日本のある教育委員会の男性担当者は、履歴を確認した経緯を説明した。 「2022年の夏ごろ、ある公立中学校から『最近、様子がおかしい生徒がいるので検索履歴を確認してみたい。一緒に見てもらえないか』と相談を受けた。自殺をにおわせるような振る舞いがあるということだった。中学校に行き、その生徒の履歴を見ると、自殺に関連するような検索をした記録が出てきた」