「子どもがネットで何を検索したか、学校は把握できます」 学習用デジタル端末の新機能は有用?プライバシー侵害? 生徒の悩みも性的指向も浮き彫りに
「自殺 方法」のような直接的な言葉による検索は、ソフトのフィルタリング機能に引っかかる。この生徒は、自殺をほのめかすような別の言葉を、手を変え品を変え入力していた。それでも結局、自殺に関する情報が載ったサイトにはたどり着けなかったようだ。 履歴を見た教員は「あー、やっぱりそうなんだね…」といった反応だったという。 教育委員会の担当者は、中学校がその後、この生徒にどう対応したかは把握していないという。情報が入ってこないため、大きな問題には発展しなかったはずだと考えている。 この中学校に取材を申し込んだが、応じてはもらえなかった。 ▽説明責任を果たしたい この教育委員会の男性担当者と話をしていると、「検索履歴が閲覧できる機能は大事だ」と語った。理由を聞くと、意外な答えが返ってきた。 「『何か』が起きたときに、因果関係を証明できるようにしておきたい」 彼が言う「何か」とは、例えば自殺や違法薬物の使用だ。生徒が学習用デジタル端末で情報を得て、取り返しの付かない事態に至ったのではないか―。教育委員会が外部からそんな風に責められることを心配しているという。
少し考えすぎのようにも思えるが、彼はこう続けた。 「履歴が残っていれば『端末からは、自殺をうかがわせる兆候は見つからなかった』などと説明できる。説明責任を果たしたいということです」 ▽大人も同じ? この男性担当者によると、検索履歴を学校側が把握することは親も同意している。 「年度初めに、保護者から同意書にサインをもらっている。同意書には『ログ(履歴)の取得を行っている。必要に応じて閲覧することもある』と記載している」 同意書の内容は、保護者を通じて子どもも確認するよう伝えている。ただ、子どもがどこまで理解しているかは分からない。 これまでに「履歴を見られたくない」という家庭はなかったのだろうか。 「これまでにそういったケースはないが、(学校側から)丁寧に説明してご協力いただく形になると思う」 話を聞いていると、この自治体では事実上、親や子どもに拒否権がないように思える。率直な疑問をぶつけてみた。
「子どもの検索履歴って、見てもいいものだと思いますか」 彼はしばらく沈黙し、答えた。 「学習のための端末なので…。ただ、プライバシーの問題はある。私も仕事でパソコンを使っていますし、気持ちは分かる」 そして、こう続けた。 「でもその点を言うと、私たちのパソコンも同じようなものですよね」 この自治体の端末には、情報漏えい防止などを売りとする監視ソフトが組み込まれているという。「(検索履歴も)見ようと思えば、全部見られてしまうんですよね」 丁寧な口調でそう続けて、少し困ったように笑った。