作家想いのオーナーが好きな手仕事を集結させた一軒家のギャラリー『Jikonka TOKYO』。
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「さ」は桜新町へ。
桜新町を散策中、マップ上で見つけた『Jikonka TOKYO』というギャラリー。毎週土曜日と第4日曜日のみの営業で他の日は予約制、しかも駅から20分歩いた場所にある。簡単には行けないところに興味がそそられてすぐに予約した。 東京五十音散策 桜新町⑤
住宅街にある3階建ての広々とした一軒家で、オーナーの西川弘修さんが出迎えてくれた。『Jikonka』は1998年に三重県の関町から始まった衣食住にまつわる品々を販売するギャラリーで、現在はパートナーの米田恭子さんが三重を拠点に活動し、西川さんが後からできた東京のショップを管理している。三重ではお茶の栽培や藍染めなどを行い、東京は作家が手仕事で作った器や家具を中心に取り扱う。
器や家具は長く使えるものや古典に学ぶ作家の作品に絞ってセレクト。「作家が送ってくれたものを展示して、売れなかったら返却ということをやっていては、作家にだけリスクがあってギャラリーはリスクを背負わないことになります。それはできないですね。」と西川さん。全て買い取り、心から好きな作品だけを常設しているから空間に統一感があり、クオリティの高いものが揃う。
日本の一般的な家庭では大きな壺や花器を置くスペースを確保するのは難しいが、住環境とは違う国では大きな壺もよく売れる。作家が大きな作品を作り続けられるよう、海外にも間口を広げており、中国、韓国、台湾から来るお客さんが特に多い。
商売をする上で売れる作品を置くことはもちろん重要だが、それよりも「良い手仕事を紹介したい」という気持ちが伝わってくる。西川さんの目で選ばれたものが並ぶ空間はどこに目を向けても抜かりなく、程よい緊張感が漂う。器を一つ選ぶだけでも長く記憶に残る買い物体験になるはずだ。
インフォメーション
『Jikonka TOKYO』 2010年オープン。店名のJikonkaは漢字で而今禾。「而今」は今このとき、「禾」は穀物の総称でなくてはならない命の糧、大切なもの、という意味があり、「今この時をどう生きるか」という思いが込められている。イベントや骨董市に出展することも時々ある。平間磨理夫先生、小春丸先生の生花教室も月に3回開催。 ○東京都世田谷区深沢7-15-6 ☎︎03・6809・7475 13:00~17:00 毎週土曜、第4日曜営業、その他の日は要予約。 photo: Hiroshi Nakamura, text: Eri Machida, edit: Toromatsu
POPEYE Web