異例?!両チームが「勝ちに等しい引き分け」ってある?横浜DeNAとソフトバンクの“セパ格差対決”は1ー1のドロー
最速は154キロだった。 立ち上がりこそ、柳田をつまらせ打ち取った打球が薄暮の時間帯の照明に重なり佐野が打球を見失って二塁打となり、二死二、三塁のピンチを招いたが、中村晃を鋭いフォークで三塁ファウルフライに仕留めた。 最大の試練は1-0で迎えた6回。先頭の牧原大にレフト前ヒットを打たれ、一死を取ったあとに栗原にエンドランを決められた。一死一、三塁で柳田である。だが、中川は強気だった。149キロの高めの釣り球。柳田がひっかかった。三遊間を襲った打球を大和が逆シングルでさばくと名人芸のジャンピングスロー。併殺崩れの間に同点にされたが、中川はキレなかった。 続く中村の打席で、柳田に盗塁を決められ、結局、四球。続く長谷川はフォークで、完全にタイミングを狂わせたが、超ボテボテのゴロが三塁側に転がり、中川が処理したが少し送球がそれてヘッスラを敢行した長谷川の手が先にベースに届いた。二死満塁。絶体絶命のピンチである。中川はマウンド後方で2度ジャンプした。 日ハムの金子がオリックスで全盛の頃に「マウンド上のジャンプは体に振動を与え、生態学上、力みを消すことにつながる」という話を聞いたことがある。 甲斐に対してカウント2-1から外角に投じた90球目は153キロをマークしていた。満塁になったことで、走者を意識せず、“リトルライアン”と評される独特の左足を伸ばしてタメを作るフォームで重たいストレートを投げることができた。そのボールは甲斐のバットをほんの少し押し込みライトフライ。中川はキャッチャーの伊藤とグータッチした。 「1点を取られたが、内野ゴロの1点なんで仕方がない。その後、ガタガタいかずに踏ん張れた。チームにとっても大きいし、あそこを乗り越えたことが、中川の財産になると思う」 三浦監督はベンチに帰ってきた中川と話をしていた。 「本人の感覚を聞いた。今日のことを忘れず、大きなモノをつかんだなという話をした」 今季は5月1日のヤクルト戦、7日の阪神戦の2試合に先発したが、勝利投手の権利を得る5回をクリアできなかった。その後、中継ぎ待機することも多かったが、ブルペンでは、一番先にピッチング練習をはじめ「できるだけボールを触る時間が長くなるように」心掛けていたという。 池田氏は、中川をこう評した。 「先発陣をなかなか整備できていなかった横浜DeNAにすれば、中川という先発候補に見込みが立ったことは大きい。ヤクルトの“ライアン”小川のように左足を伸ばすように使うことで、うまくフォームにタメを作り、150キロを超えてくるストレートに力があり、それがあるからフォークが生きていた。色々と工夫はしていたが、走者を背負ったケースのクイック投法は未完成。ときおりフォームを盗まれていた点は課題だろうが、今日は、そのことよりもボールの質に主眼を置き、打者に集中ができていた」