なぜセ最下位の横浜DeNAがパ首位のソフトバンクに逆転勝利できたのか…ルーキー牧のリベンジと無安打無失点ブルペンの仕事
横浜DeNAが1日、横浜スタジアムで行われた交流戦のソフトバンク戦で4-3で逆転勝利して交流戦2位に浮上した。横浜DeNAは2点ビハインドで迎えた8回にルーキー牧秀悟(23)の2点タイムリー二塁打などで3点を奪い一気に逆転。9回にはソフトバンクの周東佑京(25)の“暴走”などもあって1点を守りきり勝利をつかんだ。セ・リーグ最下位の横浜DeNAはなぜパ・リーグ首位のソフトバンクから第1戦の勝利を手にすることができたのか。
スペシャリスト周東の判断ミスと牧の強肩
幕切れは劇的。そして、ここでも牧だった。 リードは1点。勝利まであと一人で、三嶋が牧原大をストレートの四球で歩かせると、工藤監督は、代走に切り札の周東を送った。打席には、勝負強いベテランの代打の明石。日本一チームは土壇場で横浜DeNAにプレッシャーをかけてきた。 横浜DeNAバッテリーは、当然、足を警戒した。執拗な牽制…。カウント0-1から三嶋が1球、そしてもう1球、牽制を投げたが、そのボールが逸れた。周東は難なく二塁へ。そしてボールがファウルゾーンに転々とすることを自ら確認した周東は、躊躇なく二塁を回り三塁を狙った。ボールを処理したのは牧。三塁へダイレクト送球。周東は頭から回り込んだが、途中出場の知野が冷静にタッチして、そこでゲームセット。 「周東さんは足が速い。絶対にサードへ行くと思った。あんな(送球のボールが)伸びるとは思わなかったけど思い切って投げれてよかった」 松本第一高時代には抑え投手も経験した牧の肩はダテではない。 マウンド上で牧は三嶋とハグ。喜びを分かち合った。 ここまでパ2位の15盗塁をマークしている“韋駄天”周東は自らの足を過信していた。間一髪のタイミングではあったが、二死なのだから100%の確信がなければいってはならないケース。背後で起きたアクシデントだが、一瞬、目視で確認した周東はボールが転がる先を予測して三塁を狙った。三塁コーチもストップはかけていなかった。 侍ジャパンで三塁コーチを務めたことのある評論家の高代延博氏は「周東の足なら二塁からでも1本のヒットで生還できる。一死ならまだしも二死で三塁を狙うケースではない。上手い走者は、後ろの打球でも自分で見るが、二塁を回ったところでもう一度確認すべきだったし、三塁コーチも大きなアクションでストップをかけるべきだった。どちらも判断ミスだが、選手のミスを消してあげられなかった三塁コーチの責任の方が大きいかもしれない」と解説した。 王者らしくない判断ミスに牧の強肩が重なり、セ最下位の横浜DeNAがパ首位のソフトバンクに逆転“下剋上”勝利したのである。 新型コロナ禍で、人数制限があり、応援スタイルにも自粛を呼びかけられているハマスタが今季一番とも言える熱気を帯びたのが2点を追う8回である。 ソフトバンクがセットアッパーとして送り込んだのは2014年のドラフト1位の松本裕だった。モイネロがキューバ代表として東京五輪の米大陸予選に出場するために不在。ここまで、このポジションには津森、泉を起用してきたが、津森は、ひとつ前の回に使い、泉も調子を落としていたため、好調の松本を選択した。だが、そのソフトバンクベンチの迷いに横浜DeNAがつけこんだ。 一死から佐野がヒット、オースティンが四球を選び、一、二塁として「初球から積極的にストライクが来たら思い切り自分のスイングをしよう」と待ち構えていた宮崎が初球のカーブを強引に引っ張った。 打球はレフトフェンス上部を直撃した。まず1点。さらに二、三塁と同点機が続いたが、工藤監督は動かず、続くソトへの初球がボールになると、そこで申告敬遠を球審に伝えた。 一死満塁。 7番の牧には心の準備があった。