増え続ける「鹿」の課題に向き合う…農家・長谷川純恵さんの選択とは「生まれてきたら、生きる」その覚悟とは
今年代々木にオープンした、話題のレストランCIMI restorantは「地球と人が共に健康になれる食事」をモットーに、日本の自然環境が抱える課題解決に貢献する食材を厳選し、食を通じてアクションを起こしている。24年9月に彼女たちが長野で開催したフィールドワークに参加した。 【写真】更年期の体重増加を防ぐために必要な6つのこと そこで、化学肥料や農薬に頼らず農業に取り組む長谷川治療院農業部の長谷川 純恵さんに、現在の日本の農業の現状、増え続ける鹿による課題、そして自然との向き合い方についてお話を伺う機会をもらった。
有機農業面積は1%未満。経済的な理由で有機農業をあきらめる人たちも多い
「日本の農業は非常に厳しい状況にあります。有機農業面積は全体の1%未満にとどまり、慣行農業面積も減少の一途をたどっています。農林水産省は効率的な農業の推進を図っていますが、小麦粉の供給不足や外国での肉の高値取引が続いているため、日本は国産の生産を強化する必要があります。しかし、農家の減少が続いており、特に中山間地域では小規模な畑や田んぼが多いため、効率化が難しいのが現実です。農業自体が利益を生みにくく、子どもに跡を継がせたくないと考える農家がほとんどです。市場原理により価格が決まるため、農家は厳しい経済状況に追い込まれ、有機農業を志す人々も、経済的な理由から辞めざるを得ないケースが多いのです」 純恵さんが教えてくれた複合的な要因が、現在の日本農業の持続可能性を脅かしているのだ。
「大豆の8割が鹿に食べられてしまいました」
昨今、農家の皆さんが直面しているのは、増えすぎた鹿による農作物の被害。純恵さんもその一人で、大豆の8割を鹿に荒らされ、大きな被害を受けた。その結果、罠猟の免許を取得して対策に乗り出す選択をした。 「罠猟の免許を取得したときに、私は野生動物との関わりについて深く考えさせられました。カボチャや大豆を食べる鹿にショックを受けていましたが、彼らも自然の一部として生きていることを改めて実感しました。鹿が私の野菜を食べる行為も、自然の循環の一環なのです。このことに気づいたとき、私たち人間もまた、自然の一部として共存していくべきだと強く感じました」