気候変動対策「1.5℃目標」への対策が不十分な場合の被害・損失は、日本でもすでに出始めた
■9月の能登豪雨も温暖化の影響
9 月に能登で発生した豪雨は、石川県の発表(12月10日時点)によると、死者15人、住宅被害1804 棟の甚大な被害を出した。 文科省は12月、イベント・アトリビューションに基づく分析結果として、特に雨が多かった時間帯では、地球温暖化の影響によりピーク時の9時間積算雨量が15%程度増加したと公表した。
■気候変動が緩和されないとコメの収量低下で経済損失も拡大へ
十分な気候政策を講じなかった場合の影響は、産業にも悪影響をもたらす。 世界的医学誌「ランセット」が主宰する「ランセット・カウントダウン」の最新レポートで、2023 年には暑熱への曝露が、日本でのべ約22億時間の労働時間を奪った。労働能力の低下に伴う潜在的な収入の損失は、約375 億米ドル(約5.6兆円)に上った。 さまざまな産業が影響を受ける中、気候変動の影響を最も直接的に受けるのが第一次産業だ。 福島大学共生システム理工学類は10月、東京大学と拓殖大学との共同研究として、東北と九州のコメの生産額が気候変動で受けうる影響を日本農業気象学会の学会誌に発表した。 それによると、気候変動が緩和されない場合には、コメの経済損失が拡大し、その頻度も高まるおそれがあるという。仮に産業革命前から4℃上昇した場合、1℃の気温上昇で、コメの収量低下による経済損失額は、東北で70億円、九州で120 億円に上るという。 農林水産省が2024年9月に発表した「令和5年地球温暖化影響レポート」では、2023年、高温によって米粒が白濁化する白未熟粒が、北日本・東日本では約5割、西日本では約4割で見られた。味が落ちる白未熟粒が増えると、コメの等級が下がることから農家の収入減につながる。
■リンゴ、ぶどう、うんしゅうみかん、トマト、イチゴも
コメだけではない。農林水産省の同レポートは、地球温暖化が果物や畜産に与える影響も示す。 具体的には、リンゴでは着色不良・着色遅延による影響が北・東日本では3割程度で見られた。ぶどうでは着色不良・着色遅延による影響が西日本では3割程度で見られた。うんしゅうみかんでは、日焼け果の発生による影響が西日本では4割程度で見られた。 トマトでは収穫期の高温による着花・着果不良の発生による影響が全国で4割程度、東・西日本で4割程度見られた。いちごは、花芽分化期の高温により、花芽分化が遅れた影響が全国で4割程度、西日本では5割程度で見られた。 乳用牛においても、高温により乳量・乳成分の低下や、繁殖成績の低下による栄養が全国で1割程度見られた。