大学3年で「閉じこもり」に…精神疾患を発症した息子が、支えてくれる母親に告げた「奇跡の一言」
大切な次男が大学3年生で「閉じこもり」に。そのとき母は
さて、細かいことをいろいろ述べましたが、私が制度にこだわるのには訳があります。 法律による国の制度、条例による都道府県や市区町村の制度、事業者による福祉サービスなど、世の中には(障害の有無にかかわらず)使える制度がいろいろあります。ところが、どの制度もこちらから「活用したい」と手を挙げなければ使えません。つまり、どんないい制度があっても、私たちが知らなければ「ない」のと同じになってしまうのです。 一方、制度を「知る」だけでも、それなりのメリットがあります。〈いろんな制度があるんだな〉〈これは使えるかもしれない〉……そうわかっただけで、人は安心でき、心の余裕も生まれ、周囲に少しだけ優しくできるようになります。知ることが有する「安心効果」、これを知ってもらいたくて、身近な手当のことを少し紹介したのです。 ここでひとつ、エピソードに触れておきましょう。 山川さん(現在80代)という女性は、20歳で結婚し4人の子宝に恵まれました。朗らかな性格の彼女は、編み物講師として、あるいは子どもの学校のPTA活動や町内会活動をとおして地域にとけこみ、充実した日々を送っていました。 そのようななか、大学3年生になった次男が授業に出なくなり、自宅に閉じこもるようになります。驚いて精神科を受診させてみると、精神疾患を発症していることがわかりました。当時はまだ福祉が充実しておらず、精神疾患を抱える子ができること・通える場所はありませんでした。 親としてこの子をどう支えればいいか、病気とどう付き合っていくべきか……、40代になっていた山川さんはもどかしく感じたり、悩んだり、ときには泣いたりもしたそうです。ですが、落ち込んでばかりはいませんでした。 情報を得たい……その一心で山川さんは関西から上京し、東京にある精神科病院や家族会を手始めに、全国を走り回ったそうです。その過程で保健所が精神疾患の相談窓口であることがわかり、弁当をもって日参し、保健師や他の家族と交流するようになっていきました。 山川さんの前進は続きました。心ある支援者や、同じ境遇にある仲間の支援をうけながら、次男を支え、同時に自ら家族会を立ち上げ積極的に運営するなど、活動の幅を広げていったのです。「知る」をきっかけに、悩み苦しんでいた山川さんの世界は開けていったのでした。