また一つ”夢のアリーナ”完成 船橋の「ららアリーナ」から見る思惑と期待
各地で建設が進む多目的アリーナの背景にバスケBリーグ 大型アリーナを渇望していた千葉ジェッツ
2021年4月に沖縄アリーナ(沖縄県沖縄市)、23年4月にオープンハウスアリーナ太田(群馬県太田市)、23年5月にSAGAアリーナ(佐賀県佐賀市)と、スポーツの試合や音楽ライブなどエンターテインメントに即した大型多目的アリーナが、この数年次々と開業している。他にも、現在建設中だったり、建設計画が決まってこれから建て始めるものも含めるとかなりの数のアリーナが全国で建設が進んでいる。 一つの契機となったのが、バスケBリーグのプレミア化プロジェクト「B革新」。2026年・2027年シーズンから、NBAに次ぐ世界的なリーグへと高めていくべく、リーグのプレミア化を構想した。その参入条件が、売上高12億円、平均入場者数4000名、そして収容人数5000人以上等の基準を満たすアリーナなどだった。さらにアリーナにはVIPルームの設置やトイレの設置数の基準を求めるなど、チーム側にとっては高いハードルとなっている。この条件をクリアするために、Bリーグの各チームが自治体と組んで建設したり、自前で資金調達して建設したりと、アリーナ建設やアリーナの改装などに取り組んでいる。 なかでも大型アリーナを渇望していたのが、リーグ随一の人気チームである千葉ジェッツだ。 千葉ジェッツの田村征也社長は「(これまで)船橋アリーナで試合をしている時には非常に多くの需要を頂いて、昨シーズンのレギュラーシーズンはすべての試合が完売状態。(試合の)チケットが取れないということが課題にもなっていた。アリーナが大きくなったことで、今までは船橋アリーナで4600人ぐらいがマックスなんですけど、それ以上のお客様に足を運んでいただけるような状況になるかなと思っております」と期待をこめた。 とはいえ、これまでの倍の1万人を集客するのは、人気チームとはいえそう簡単なことではない。 「(集客の)プラスアルファの部分に関しては、これまで2年間、我々のお客様のIDや、BリーグのID、LINEのIDといったところを中心にお客様との接点を作るような、いわゆるCRMの施策を非常に積極的に進めていた。開業後は今まで接点持たせていただいたお客様を中心に、集客を図っていきたいなというふうに考えております」 冒頭のお披露目会見で、MIXIの木村社長が「(千葉ジェッツの)ファンクラブ会員数は9145名で前年と比べ約4000名増加しました。さらにグッズ売上高やスポンサー収入、SNSフォロワー数も右肩上がりで、その影響力は拡大し続けています」と紹介していた。 また、千葉ジェッツの田村社長は、新アリーナの中で特に力を入れたい、推したいのがVIP向けサービスだという。 「新しいチャレンジになるのが、VIPラウンジとボックス。あの質感とかクオリティは、僕もいろいろアリーナを見てきましたけども、トップレベルではないかと思う。加えて我々のホームアリーナにおいてボックスを我々の方で販売させていただく。来ていただいたお客様には、フルコースの料理を提供させていただいたり、ラウンジではビュッフェ形式でお料理を提供させていただく。そこのお客様のターゲットとしては、いわゆるラグジュアリー層を狙って取っていきたい。食事を提供するパートナーさんも、沖縄で超一流の料理を提供しているところと契約する予定。スポーツエンターテイメントでコース料理を出すっていうのは恐らく今までにない。リッチなラグジュアリーな体験ができるようなVIP事業を運営していければいいなと考えている」 試合観戦チケットとコース料理を合わせて、高価格帯の付加価値サービスを提供し、単価の上昇を狙っていくという。 一般の試合チケット代が上がることを危惧するファンやブースターもいるだろう。田村社長は「VIP席やコート側の席などは単価を高くさせていただければと思っていますが、アリーナの上の階層はお求めやすい価格で提供できればと思っています。イメージとしては、飛行機のファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミーといった様なグラデーションですね」と、ひとまずはこの声を聞いて安心だろう。上の席といっても、すり鉢状に設計されているだけあってコートまで十分近く見える。