《薄井シンシアさん&木下紫乃さん対談》他人への頼み事「助けは喜んで受けるけど、私が頼むまで待たないで」「忖度して声をかけないとチャンスを逃す」
紫乃ママ「言っちゃって、やっちゃって、ダメなら向こうが断るだけ」
紫乃ママ:シンシアさんの「そっとしておこう」じゃないけれど、考えすぎて忖度する人は、すごく多い。それってどうなの? 私は言っちゃって、やっちゃって、ダメなら向こうが断るだけ、の話だと思います。 以前、大学院へ進学するかどうかを迷っていた40代の女性に相談を受けたことがありました。彼女は進学準備までして迷っていたから、私は「行けばいいじゃん」と言いました。すると彼女が「学びたい先生がいるけれど、その先生にメールを出していいかどうか迷っている」と言うんですね。正直「え、そこから迷うの?」って思ったんですが、「出せばいいんじゃない?」と私が言うと、彼女は「失礼じゃないですかね? 返事が来なかったらどうしよう」と。 失礼かどうかは相手が決めることだし、返事が来なければ、それまで。もしどうしても返事が欲しければ、もう1回メールを出せばいいだけの話でしょう?「自分なりに失礼にならない内容で送ればいいんじゃない?もし、それを相手が失礼だと思えば、そういう相性だったと思うしかないよ」と言いました。相手の気持ちなんてわからないものをずっと考えてても答えはでないし時間がいくらあっても足りない。
シンシアさん「なんで、それで傷つくの?」
紫乃ママ:断られる嫌さを味わいたくない。メールを出すならちゃんと返事をもらいたいと思っているんでしょうね。一発目からうまくいくかはわからない。押しても駄目なら引いてみろ、ですよ。もし返事が来なければ、もっと緊急性を出すとか、「私がゼミに入ったら、こんな風に役立ちます」ぐらいの話を盛って伝えればいい。欲しいものがあるなら、手を変え品を変えて全力で取りに行かなきゃ。でも多くの人は結構ナイーブというか、一度でも断られると「やっぱりダメだ」と考える女性がすごく多い。私からすると、「なんでこんなことで傷つくの?」「そんなことで傷つかないでよ」と思ってしまいます。 シンシアさん:なんで、それで傷つくんでしょうね? 今まで、すべてを用意してもらっていたのかな? 紫乃ママ:断られたりすると「自分が認められない」と思っちゃうんでしょうね。普段から、自分にはあまり価値がないと思っているのかもしれない。 シンシアさん:最近、街中で声をかけられますが、みんな30代。今の30代はとても元気だから、上の世代とはちょっと違うかも。 紫乃ママ:45歳ぐらいから上の世代は、古い価値観からなかなか脱却できないけれど、世の中は変わってきていますよね。というか、若い人たちはそこについていくのがちょっと難しくなっている。 シンシアさん:こちらをチラチラッと見て「シンシアさんですよね?」と話しかけてくるのは、みんな娘と同じ30代です。 ◆薄井シンシアさん 1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う高校のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラに入社し、オリンピックホスピタリティー担当に就任するも五輪延期により失職。2021年5月から2022年7月までLOF Hotel Management 日本法人社長を務める。2022年11月、外資系IT企業に入社。65歳からはGIVEのフェーズに。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。 ◆木下紫乃さん 和歌山県出身。慶應義塾大学卒業後、リクルート入社。数社の転職を経て、45歳で大学院に入学。2016年に中高年のキャリアデザイン支援の人材育成会社「ヒキダシ」を設立。2017年、東京・麻布十番に週1回営業する「スナックひきだし」を開店し、2020年に赤坂へ移転。スナックのママとして、のべ3000人以上の人生相談を聞く傍ら、55歳で社会福祉士の資格を取得。現在は毎週木曜日14時~18時に在店。離婚2回、家出2回、再婚3回。キャッチフレーズは「どこに出しても恥ずかしい人生」。近著に『昼スナックママが教える 45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(日経BP)。 撮影/小山志麻 構成/藤森かもめ