「本の中で出会う人が、娘(8歳)に大事なことを教えてくれる」夫婦作家ザ・キャビンカンパニーが実践する育児と仕事
大人も子どもも、誰もが自分らしく楽しめる展覧会
―今回の展覧会も、自分自身の感覚を再発見するような、わくわくする体験でした。立体物に絵、文章、さらには映像など、多彩な作品が“混ざりあった”展示がお2人ならではだなぁ、と。 阿部「準備した作品が多すぎて、最終的に4tトラック6台分にもなってしまって。これまでの平塚市美術館の最高記録を遥かに超えてしまいました(笑)。 美術館って展示によっては、子どもと一緒に行きづらかったり、静かにさせないと……って気を使うことも多くて。僕たちの展覧会では、できるだけそうならないよう、子ども自身が展示の世界に“混ざりあって”、入り込んで楽しめるような仕掛けも用意しています」 ―展覧会の前半にある、自分の影が映像と一緒に壁に映し出されるという作品はまさにそうですよね。最初はおっかなびっくりだった子どもたちが、どんどん夢中になっていくのが印象的でした。 吉岡「ちょっとドキドキする子もいるかもしれないけど、意外とそういうものの方が、大人になってからもずっと大切に残る記憶になったりすると思うんです。 子どもは新鮮な視点をもっていて、かつ目線も低いので、いろんなことに気づかせてくれますよね。ダンゴムシとかも一瞬で見つけられる(笑)。だからきっとこの展示も、子どもと一緒に行くことで大人が気づかされることがたくさんあるんじゃないかなって」 阿部「今回、ビジュアルだけでなく言語表現にもこだわっていて。学芸員の方にキャプションをお願いするのではなく、テキストも全部自分たちで決めているので、ビジュアルと文字をあわせて楽しんでいただけたら嬉しいです。これはもしかしたら、大人のほうが楽しみやすいポイントかもしれませんね」 吉岡「4,000部限定で販売している図録(税込み3,200円)には、会場の最後にある作品をつくる際に飛び散った“絵の具のカケラ”を貼り付けています。これは、この展覧会唯一の“持って帰れる作品”。カケラの形はそれぞれ違うので、買ってみてのお楽しみです」 阿部「展覧会の世界観を絵本として描き下ろした“詩(うた)絵本”もセットになっているので、図録を片手に展覧会を見ると、絵本の世界と展覧会場が“混ざりあった”ような、また違った味わい方もできるかもしれません」