「これは革命ではない」…明治政府が「神武天皇」を利用した「驚きの真実」
神武天皇、教育勅語、万世一系、八紘一宇……。私たち日本人は、「戦前の日本」を知る上で重要なこれらの言葉を、どこまで理解できているでしょうか? 【写真】「これは革命ではない」…明治政府が「神武天皇」を利用した「驚きの真実」 右派は「美しい国」だと誇り、左派は「暗黒の時代」として恐れる。さまざまな見方がされる「戦前日本」の本当の姿を理解することは、日本人に必須の教養と言えます。 歴史研究者・辻田真佐憲氏が、「戦前とは何だったのか?」をわかりやすく解説します。 ※本記事は辻田真佐憲『「戦前」の正体』(講談社現代新書、2023年)から抜粋・編集したものです。
革命ではなく原点回帰
1853(嘉永6)年のペリー来航で、日本は大きな転換期を迎えた。圧倒的な軍事力と科学力を背景に、世界をその軍門に下らしめてきた西欧列強が、ついに北東アジアにまで押し寄せてきたのである。 このままでは、日本も植民地にされてしまう。それなのに、徳川将軍家の幕府は内憂外患に対応できていない──。 危機感を覚えた志士たちは、政治体制を抜本的にあらためるため、天皇に注目した。 当時、衰えたといっても、泰平の世を260年余にわたって築いてきた徳川将軍家の権威はまだまだ大きかった。そんななかで「新しい政治を」と訴えたところで、「なんでぽっと出のお前らが」と反発される恐れがあった。 そこで天皇を押し立てるとどうなるか。 「いやいや、日本はもともと天皇の国だった。歴史をみたまえ。平安京に都を遷したのは桓武天皇。そのまえに大化の改新をやったのは天智天皇。その祖先は──神武天皇だろう。政治改革といっても、原点回帰するにすぎない。だいたい将軍だって、天皇より任命されているぞ」 こう言い返せるわけである。なかなか強力なロジックではないか。 そのため、明治維新の「維新」は英語でRestorationと訳されている。王政復古という意味だ。すべてをひっくり返す革命=Revolutionではない。少なくとも、明治維新はそういう体裁をとり、みずからの正当性を獲得しようとしたのだ。