生徒らが奏でる竹製打楽器の優しい音色…世界の民族楽器を演奏してきたミュージシャン「自然を保全する心を」
私たちの世界は音楽をはじめ様々な音や声であふれ、それにより癒やしや喜びを感じることもあります。思いを込めて音色や声を響かせる人たちを紹介します。 【写真】自身が製作した竹の楽器を手にする成澤さん
昨年3月、宮崎県日向市東郷町にある市立の小中一貫校「東郷学園」の武道場に、竹製の打楽器の優しい音色が響いた。中学1年にあたる7年生の15人が奏でるのはインドネシアに伝わる楽器「リンディック」だ。
生徒たちは地域課題などを学ぶ授業の一環として、2か月ほどかけ、切り出された竹を使ってこの楽器を組み立てたり、演奏の仕方を学んだりしてきた。この日は練習の成果発表の場。全員で息を合わせ、歌手・坂本九さんの代表曲「上を向いて歩こう」を披露すると、聴いていた上級生らから拍手が起きた。
同校中学部の椎葉貴大教頭は「生徒たちは楽器作りを通じ、身近な竹で演奏ができることなどを学んだ」と語った。
竹を楽器に変身させる授業を発案し、講師も務めたのは、5年前に日向市東郷町に移住してきた東京出身の成澤けやきさん(49)。2019年まで約10年間、欧州など海外で暮らし、オーストラリア先住民に伝わるディジュリドゥをはじめ世界各地の民族楽器の演奏活動をしてきたミュージシャンだ。
「竹は自然の一部であるにもかかわらず、日本では近年、『竹害』とも言われる。価値のあるものに変換したい」と狙いを語る。
カゴやザルの材料に使われるなど日本で親しまれてきた竹だが、近年はプラスチック製品の普及などで全国的に活用の機会が減っている。竹は生育が早く、人の手が入らない竹林は、周囲の土地にまで広がってしまう恐れがある。「竹害」と言う人がいるゆえんだ。
一方、竹はインドネシアなどでは楽器の材料にも使われる。「竹を楽器にすることを通じ、子どもたちに自然環境を保全する心を育んでもらえたら」と成澤さん。楽器作りは昨年度、同県都農町の小学校でも行った。今年はNPO法人が同県延岡市で行う子ども向けのスクール「学び舎ヒノワ」でも同様の活動を行う予定だ。