生徒らが奏でる竹製打楽器の優しい音色…世界の民族楽器を演奏してきたミュージシャン「自然を保全する心を」
成澤さんはなぜ、日本の地域課題の解決に関心を持つのか。海外での生活の影響が大きいという。
英国で民族楽器のストリートパフォーマンスをしたり、フランスのパリコレクションで演奏したりする中で多くの人と交流した。驚くほど多くの人がアニメや食などを通じ日本に関心を持っていた。次第に祖国に誇りのようなものが生まれ、「日本で何か役に立つことをしたい」と思うようになったという。
19年10月に帰国。生活する拠点を探していた同12月、演奏活動で訪れた宮崎県で、知り合った人から日向市東郷町の古民家を紹介された。利用させてもらうことにしたが、当初は3か月だけ滞在する予定だった。
ただ、自然を大切にし、よく笑う地元の人と触れあううちにこの地が好きになった。コロナ禍で移動が制限されたことも重なり、定住することに。暮らすうちに竹の活用が国内で課題となっていることも知った。
この約5年間、国内外の各地を訪れて演奏活動を続ける傍ら、東郷町にいる間は竹の楽器作りに加え、地元のミュージシャンらが集う東郷音楽祭、有機栽培をする人らの産品のオーガニックマーケットも企画してきた。音楽祭などは定例化され、日向市東郷総合支所東郷地域振興課の中野格課長は「イベント開催などを通じ、地域ににぎわいが出ている」と語る。
成澤さんは昨年、音楽を使って持続可能な地域づくりを目指すこうした活動が評価され、「ひろしま国際平和文化祭」でひろしまアワード(音楽部門)を受賞した。「音楽を聴くことで人は幸せな気持ちになったり、落ち着けたり、喜びにあふれたりすることもある」と成澤さん。今後も音楽を通じ、地域のためにできることをしていきたいと思っている。