ハリウッド へ接近する広告業界。 エンターテインメントはますますマーケティングの重要な要素に
大手ラグジュアリーファッションブランドのルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー(Louis Vuitton Moet Hennessy:以下、LVMH)は2024年2月、「22モンテーニュ・エンターテインメント(22 Montaigne Entertainment)」を発表し、大きな話題をさらった。スーパーコネクター・スタジオ(Superconnector Studios)と提携して、LVMHの75のブランドを映画やテレビで売り込むための新プラットフォームだ。 これは、マディソン・アベニュー(広告業界)とハリウッド(映画業界)の結びつきを深めようとしている大手マーケターの最新の動きであり、マテル(Mattel)、ナイキ(Nike)、任天堂などが最近行ったブランドとエンターテインメントの取り組みの成功に追随するものといえる。 マーケターは、消費習慣の変化とそれに伴う細分化によって、従来の広告形態では生活者へのリーチが難しくなっていることを十分に認識している。そうである以上、マーケターはいま、人々が積極的に求めるカルチャーの一部、つまりエンターテインメントの一部となる方法を見つけることにより関心を寄せている。
エンターテイメントがマーケティングの手助けになる
たとえば、2024年のサンダンス映画祭(Sundance Film Festival)で、CMOレベルの幹部たちの姿が多く見受けられた。同映画祭でナイキが資金提供したドキュメンタリーが、Netflixで取り上げられたからだ。このシナリオではナイキが先頭を走っているが、ほかのブランドもエンターテインメントという領域でより大きな存在感を見せるだろうという予感がある。 大手タレントエージェンシーのUTAで、エンターテインメント・マーケティング・チームの共同責任者であるデビッド・アンダーソン氏は、ハリウッドとの提携に関するマーケターの雰囲気について尋ねられた際、こう答えた。「ブランドのなかには、10万ドル(約1500万円)を出資し、開発資金を提供するところもあるが、ここ数年でそうした企業は、より大規模な投資にも前向きだという声が聞かれるようになった」。 エンターテインメントとの結びつきを深めたいと考えているマーケターは、どうすれば視聴者にエンゲージできるかについて考えている。2024年初めに正式に設立されたブランド・コンテンツ・スタジオのアンド・ファーザーモア(And Furthermore)でエグゼクティブ・プロデューサーを務めるジャスティン・ブース=クリボーン氏は、「マーケターは消費者と取引する関係から、より感情面における関係になりたいと考えている」と話し、エンターテインメントがその手助けになると付け加えた。