【富士S回顧】停滞するマイル戦線を動かしたジュンブロッサム 父、母から受け継いだ晩成の血が開花
セリフォス、ソウルラッシュの壁
昨年のマイルCSの2、3番人気はセリフォス、ソウルラッシュ。今年の安田記念ではソウルラッシュ2番人気、セリフォス3番人気。2頭はGⅠ以外も含め、今回で5戦連続対決し、通算では9戦目だった。先着数ではソウルラッシュ5回、セリフォス4回で、昨年のマイルCSから続く5連戦はすべてソウルラッシュが先着して4連敗から5連勝。どこかの球団に見習ってほしいほど、ソウルラッシュが逆襲を果たしている。5戦連続対決が象徴するように、この1年のマイル戦線はセリフォス、ソウルラッシュ中心のまま動いていない。 【2024菊花賞】注目の予想はここからチェック! さすがにそろそろ新星が登場し、世代交代があるのではないか。富士Sにジャンタルマンタルが登録を予定していた時点で、そんな期待が頭をよぎった。もちろん、セリフォス、ソウルラッシュがハイレベルな争いの中で崩れないのは高いマイラー資質のあらわれだと認める一方で、そろそろ違う顔もみたいという気持ちもあった。わがままで申し訳ない。 だが、ジャンタルマンタルが熱発で回避し、またも1、2番人気はソウルラッシュとセリフォス。しかし、制したのは新顔のジュンブロッサムだった。。セリフォスと同じ5歳なので、世代交代とはいえないものの、マイル戦線が動いたのは事実だ。
晩成の血が騒いだジュンブロッサム
セリフォスが3連勝で2歳重賞を2つ制し、続く朝日杯FSでは2着とトップ戦線を走り続ける一方、ジュンブロッサムは2歳11月の初勝利後、共同通信杯4着、アルメリア賞2着と2勝目が遠かった。あげたのは3歳7月のこと。その後も2勝クラス卒業まで7戦を要し、崩れはしないが、あとひと押し足りないという歯がゆい状況が続いた。 だが、昨秋に2勝クラスを勝つと、3勝クラスは2戦で卒業と、5歳になって明らかに戦歴が変化していった。昇級初戦の関屋記念は完全なる前残りをよく伸びて3着と重賞通用のメドをたてた。明らかな晩成型の戦歴に、このままGⅠまで一気に逆転を期待したくなる。 母エンプレスティアラの母はゴールドティアラなので、同じく富士Sを制したステファノスが近親にいる。兄弟はボルドネスが5歳で3勝目をあげ、レッドレグナントも5歳夏にオープン入りするなど、ジュンブロッサムと似た晩成型が多い。母系のよさがここにきて出てきた。 父ワールドエースは早期に活躍したので、晩成のイメージは薄いが、富士Sに出走したメイショウシンタケや6歳でオープン入りしたユキノファラオ、キャリア15戦目で3勝クラスを突破のサンストックトンなどじわじわと強くなる産駒が多い。よく考えれば、ワールドエースが1:31.4でマイラーズCを制したのは5歳の春なので、成長曲線の幅は広い。ますますジュンブロッサムには一流マイラーへの期待がかかる。 レースは序盤600m34.2、前半800m46.1と東京マイルらしい緩急なき流れ。3コーナー12.0は緩んだうちに入らない。ここからラスト600m11.5-11.2-11.3で後半800mは46.0。さすがにソウルラッシュ、セリフォスが出走しただけあって、一流マイラーでないと太刀打ちできない流れだった。中団後ろで脚を溜めたジュンブロッサムは上がり600m33.1だから文句なし。マイラー資質の詰まった一戦を制した価値は非常に高い。