石破首相も活用を訴える「短時間正社員」は夢の働き方か?テレワークと同様“市民権”を得るためにすべきこと
■ わずか3.2%の利用者にとどまる「短時間正社員制度」 石破茂首相は所信表明演説にて若者や女性が安心して暮らせる働き方について言及する中で、「時間に余裕を持ちながら正社員としての待遇を得る短時間正社員という働き方も大いに活用すべき」と述べました。 【写真】フルタイム以外はパートタイマー勤務、極めて導入事例が少ない「短時間正社員」 短時間の働き方と言えば、真っ先にパートタイマーが頭に浮かびますが、短時間かつ正社員という働き方については、まだあまりなじみがない印象を受けます。短時間正社員とはどういう働き方で、どんなメリットやデメリットがあり、職場がどう対処すれば活用できるのでしょうか。 短時間正社員については、厚生労働省の「多様な働き方の実現応援サイト」にて以下のように説明されています。 フルタイム正社員と比較して、1週間の所定労働時間が短い正規型の社員であって、次のいずれにも該当する社員のことを言います。 (1)期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している (2)時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同種のフルタイム正社員と同等 しかしながら、いまのところ導入されている事例は多くありません。厚生労働省が公表している「令和5年度雇用均等基本調査」によると、短時間正社員制度の利用者は3.2%にとどまります。利用者の8割強は女性です。 育児介護休業法では、3歳に満たない子どもを養育する社員の所定労働時間を原則として6時間にすることが義務付けられています。そのため短時間正社員制度を設けている多くの職場では、育児などとの両立がしやすいよう福利厚生の一環として導入しています。 一方、短時間正社員を望む働き手からの声は少なくありません。
■ 時間制約がある人材を戦力化しやすくなる職場側のメリット 筆者が研究顧問を務める「しゅふJOB総研」が仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層460名に調査したところ、短時間正社員で働いてみたいと思う人は65.9%に上りました。それに対し、実際に働いた経験のある人は11.6%。希望者は多いものの、まだまだ現実的な選択肢ではない夢の働き方の一つと言えるかもしれません。 もし短時間正社員という働き方が選択しやすくなると、職場側にも働き手側にもさまざまなメリットをもたらします。少なくとも7点あり、福利厚生的側面と戦略的側面の2種類に分かれます。 まず1点目は、ご自身の障害や病気などの理由により長時間での就業を希望しない人にとって活躍しやすい職場になること。これは福利厚生的メリットと受け取られがちですが、多様な人材を戦力として活かしやすくなるという観点からは人材戦略上のメリットです。 次に、働き手が育児などのライフイベントを迎えても仕事と両立しやすくなり、辞めずに仕事を継続できることです。これも基本的には福利厚生的メリットですが、採用難の折、職場が定着率を上げられるという観点に立つと戦略的メリットでもあります。 そして、3点目以降は基本的に戦略的なメリットです。まず、採用の間口が広がります。短時間正社員を導入できれば、副業したい人材や特殊な経験・スキルを有しながら何らかの事情で時間制約がある人材などを戦力化しやすくなります。それは優秀な人材を求める職場にとっては大きな武器となり、働き手にとっては就業機会が増加します。 さらに、家庭と仕事を両立しなければならない状況に置かれた場合、パートなどの働き方は適している一方、働き手はキャリア継続を諦めざるを得なくなりがちです。学生時代のアルバイトと同じ仕事に戻ることもあります。 しかし、短時間正社員ならば相応の経験やスキルが問われる一方でキャリアを継続しやすくなります。職場側も働き手が社会に出てから培ってきた能力を活かすことができます。これが4点目のメリットです。