「母親になったことを後悔する」。ある女性が告白した、墓場まで持っていきたい秘密とは
----母親が後悔すると、子供との関係も傷ついてしまうのでしょうか。
現実はそんなに単純ではないと思います。子供が自分はひとりぼっちだと感じている場合も、感じていない場合もあるようです。子供はたいてい母親が後悔していると話すのを聞いたことがないですしね。というのも、母親たちは身を守るためにその気持ちを秘密にしていて、墓場まで持っていこうと考えているからです。一方で、子供が成長し、母親がかけてくれた愛情と母親自身の後悔をはっきり分けて考えることができるようになってから、この話をしようと考える母親もいます。子供自身に罪悪感を持たせないようにするやり方ですね。親になるということは世間で言われているほど充実したものではないかもしれない、と伝える1つの方法でもあります。何年か前、若い女性の生徒がこう言いました。母親になったことを後悔している自分の母の気持ちがわかるようになった、と。腹が立ち、がっかりする気持ちを超え、共感や同情を感じられるようになったそうです。女性と母親としての役割を区別して考えられるようになったからです。このような区別が今の社会に必要なのだと思います。
----後悔の気持ちは、徐々に消えていくのでしょうか。
そうですね。全員とは言えませんが、そうなる女性もいると思います。調査の際、未だに母親になったことを後悔していると打ち明けてくれたお祖母さんたちもいました。そういう後悔がある日消えてほしいと願うのはもっともなことですが、時間さえ経てば母親であることに慣れるものだという決めつけが根強く残ることになります。実際は、母性にどうしても馴染めないという女性たちが数多くいるのです。
----気持ちが語られることで、後悔している母親たちだけでなく、子供が欲しくないという女性たちも楽になれるのでしょうか。例えば、ご自身は子供を持ちたくないとおっしゃっていますよね。そのことで、研究がもっと意味のあるものになったと思われますか。
そうですね。母親になりたくない女性たちにとっても意味がありますが、別の見方をすれば、母になりたい女性たちにも意味があると思います。私の意図を誤解して伝えたメディアもあるようですが、私は、本当に本人が望むのなら、母性や母親、子供たち、出産そのものに反対しているわけではないのです。もし私が「母になることは、女性にとって人生で一番の間違いだ」などということを証明したかったのなら、男性のほうが女性自身よりわけがわかっているという父権制社会と何ら変わりがないですよね。私が目指したのは、女性たちの話を聞くこと。子供が欲しいかどうか、後悔しているかどうかにかかわらず、女性たちが言いたいことに丁寧に耳を傾けることなのです。 注1)「母になったことを後悔:社会政治的分析」はイスラエルの女性23人(26歳から73歳まで)を調査した研究。参加者は全てユダヤ人で、そのうち5人は無神論者、12人は一般信徒、3人はその他に分類され、残り3人は宗教についてはノーコメント。子供たちの年齢は、1歳から48歳まで。 注2)フランス語版「Le Regret d'être mère」Odile Jacob出版、240ページ、21.90ユーロ。 この記事は、2019年11月26日に掲載され、今回更新されたものです。
text:Tiphaine Honnnet(madame.lefigaro.fr),traduction:Aki Saitama