奈良で古民家暮らしを始める人が続々! 町家を改修した宿できっかけつくる「紀寺の家」がおもしろい 奈良県奈良市
町家で過ごす豊かな時間がつなぐ古民家再生への道
そうして俊平さんは、きちんと改修された町家であれば快適に過ごせることを示すため、「紀寺の家」の運営を開始します。また同時に、町家暮らしを希望する人のための窓口として「町家・古民家暮らし準備室」を設けることになります。 「紀寺の家に宿泊されるお客様のなかには、こういった家に住みたいとおっしゃる方も多くいます。そうした方に、どうすれば町家に住めるのか、物件の探し方や改修の進め方といった具体的な行動につなげていくための入口として情報提供を行っています」 毎月のように相談があり、「準備室」をきっかけに藤岡建築研究所で改修を請け負った物件もこれまで20軒ほどにのぼるそう。改修によって再生された町家で寝泊まりすることで、町家暮らしを具体的にイメージでき、行動へ移すきっかけになるのでしょう。また「準備室」での相談の多くは、藤岡建築研究所への依頼には直結しない、相談者自らが物件探しや設計者探しをする後押しとなるものです。工務店での実務を経験しながらも、自らは設計に携わらず町家を残すための活動に専念する道を選んだ俊平さんの選択が実を結んでいます。 「必ずしも町家でなくてはいけないということではなく、新築には新築の良さもあります。ただ、古いものは一度壊してしまうともう手に入らないので、できるだけ残しておかないと選択肢そのものが失われてしまう。将来、町家に住みたいと思った人がその選択ができるように少しでも貢献できるといいなと思っています」
また「準備室」で町家暮らしの相談をする方のなかには、ここに宿泊したことで初めて町家の魅力に気づくという方も。 現在「紀寺の家」のすぐ近くに立つ町家に住む田中さんご夫妻は、たまたま宿泊したことをきっかけに町家暮らしを考えるようになったといいます。 「子どもたちも自立して、そろそろ東京から地元である関西に帰ろうかな、と考えるようになったころでした。実家のある京都は家賃も高いので、関西で住みやすそうな場所を探していたんです。それまであまり来たことはなかったのですが、ちょっと奈良も行ってみようということで『紀寺の家』に泊まって。衝撃を受けました。こんな暮らしがあり得るのかと。古いものにきちんと手を入れて、愛着をもって使っていることで生まれる豊かさは、これまで国内外の旅行で訪れてきたホテルでは味わったことのないものでした」
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