奈良で古民家暮らしを始める人が続々! 町家を改修した宿できっかけつくる「紀寺の家」がおもしろい 奈良県奈良市
町家に魅せられた田中さんは、コロナ禍を経験したことで本格的に移住を考えるようになります。 「あまりあちこち出かけることもできないので、しばらく『紀寺の家』に逗留してみたんですよ。光の移ろいによって室内が変化していく様は美しく、またごはんもおいしくて、豊かな時間でした。こんな暮らしができたらいいなと思い、俊平さんに物件のご相談をしました。いくつか見て回りましたが、夫婦で住むには大きな家が多く、改修も大掛かりになるのでどうしようかなと考えていたところ、改修工事をしていた、この家(現在住んでいる家)を見せていただいたんです」
改修していたのは、紀寺の家と同じ街区に立つ町家でした。3軒並ぶ町家を改修し、住居や店舗、事務所など、多用途に対応できる町家として貸し出す新たな試みとして俊平さんが手掛けていたものです。古民家の所有者から依頼を受けて改修設計をするのではなく、自ら取得した物件を改修して貸し出すことができれば、放置されている空き家に手を入れて市場に流通させていくことができる、その足掛かりとしての新事業です。3軒のうちの一軒にかつて藤岡家が暮らしており、その経験をもとに室内を明るく照らす天窓を設けています。 「拝見したときは解体直後で、どんな家になるのかまったく予想もできないような状態でしたが、『紀寺の家』を見ているので間違いはないだろうと思って入居を決めました。床暖房を入れる位置など、少しだけ相談はさせてもらいましたが。いまは東京と奈良で2拠点居住をしていて、理想としては月の半分を奈良で過ごして、残りは東京にいて、というような生活にしていけたらと思っています。趣味の物だけをここに持ってきていて、別荘のような使い方をしています。とても快適ですよ」
東京にも拠点を残している田中さんは、東京と奈良で暮らし方を切り替えているという。 「東京にいるときと奈良にいるときでは、頭の使い方が全然違いますね。もちろんオンラインで仕事はできるのですが、奈良ではのんびりとした時間を過ごしているので仕事も全部奈良でしろといわれたら辛いですね。東京にいる間にしっかり仕事に集中できるから、奈良での暮らしを楽しめているのだと思います。時間の進み方がゆっくりで、よく旅行で訪れるイタリアに近いなと思います。夜8時にはお店も閉まるくらい、ゆとりのある生活をしている人が多く、だからなのか若い人が挑戦しやすい土地でもあると思います。面白いことに取り組んでいる人がどんどん出てきていて、俊平さんもそのひとりですね。これからどんな町に育っていくのか、とても楽しみにしています」 着実に実を結びはじめている俊平さんの取り組み。古民家に暮らす選択肢を未来の世代にも残していく動きが全国に広がっていくことを期待したいですね。 ●取材協力 紀寺の家
ロンロボナペティ
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