スペースキーが分割されたキーボードは便利なのか? キー入力の癖を考察して「REALFORCE R3」セパレートモデルの設定を試行錯誤した話
分割スペースキーをどう使うか?
R3HI17のスペック面は通常モデル「R3HA11」とほぼ同じだ。テンキー付きのフルサイズキーボードで、USB有線接続とBluetooth 5.0のワイヤレス接続に対応している。キー荷重は45gで、違いは分割スペースキーの有無だけだ。 価格はR3HA11が3万7180円であるのに対し、R3HI17は3万8280円と1100円高くなっている。 工場出荷時には、左右のスペースキーはどちらもスペースがマッピングされている。通常のスペースキーのタイピングフィーリングが受け入れられない、スペースキーが小さく分割されただけで満足、という人でもない限り、このままの設定で使うことには意味がない。 この左右のスペースキーを何に割り当てるのか、それこそがR3HI17の価値を決めると言ってもいいだろう。一般的には片方にそのままスペースを、もう1つに別の機能を割り当てることになるはずだ。 割り当てたキーの利用シーンとしては2つ考えられる。1つは日常的に利用するというもの。もう1つはゲームや特定アプリケーション向けにキーマップ自体を切り替えて使用する方法だ。ただし、R3HI17はキーマップは2つまでしか保存できない。特定アプリケーションに対して自動的に切り替えるという機能もないので、「このアプリでここにもう1つキーを置きたい」という明確な意図がないと持て余してしまうかもしれない。 左右のスペースキーどちらをスペース入力用として残すか、まずは専用カスタマイズソフトウェア「REALFORCE CONNECT」のヒートマップ機能で判断するとよいだろう。 しばらく今までと同じように使った上で、どちらのスペースキーが多く使われているかを確認できる。完全に片方に寄っていれば単純だが、そうでない場合は自身のタイピングに多少の補正を行っていく必要がある。
まずは使ってみた
スペースキーは横長であるだけでなく、親指で押下する数少ないキーでもある。そのため、人差し指や中指など、繊細な動作ができる指を使っているキーの置き換えにはあまり向かないかもしれない。そこで、まずはホームポジションから手全体が動いてしまうような動き、特に右小指の稼働を減らす方向で考えてみよう。 小指は短く、力も弱いにもかかわらず、キーボード操作においては比較的利用頻度の多い指でもある。バックスペースやEnterキーで酷使している人も多いだろう。 筆者の場合、小指でたたくキーはEnterキーと左右矢印キーくらいだった。そもそも手がホームポジションから動いてしまうことが多い。右手のホームポジションがEnterキーに乗せた小指をベースにしており、人差し指は本来のJキーではなくKキーに置かれてしまっている。 この癖のせいで筆者は日本語配列のキーボードになじみにくい。左右矢印キーが小指というのも珍妙かもしれない。テキストを打っているとき、入力中の文の中で戻ったり進めたりするときは、ホームポジションからの移動量が少なくて済むように小指を使い、一文を越えて動かしたいときは手全体を矢印キーの上に移動させ、人差し指を左矢印キー、薬指を右矢印キーに置き、中指を上下矢印キーで操作しているようだ。 その他にタイピング頻度が高いキーはHomeとEndだった。これも行頭/行末に移動する際によく利用しているが、使っている指は薬指だ。バックスペースキーも薬指を使っており、これらのキータイプ時にはホームポジションから手が離れてしまっている。このあたりをヒントにして手を入れてみることにしよう。 まずは左スペースをバックスペースキーに割り当ててみた。使いづらくならないよう、元のバックスペースキーはそのままにしていたのだが、その状態だとついつい、本来のバックスペースキーを使ってしまう。退路を断たなければいつまでたってもなじめなさそうだ。 試しに、思い切ってバックスペースキーにはNon(Unallocated)を割り当てることにした。これでバックスペースキーを押しても何も反応しなくなった。 結果は……大惨敗だ。そもそも我流の英語配列タイピングを長年続けているせいで、変な癖が付きすぎている。 分割スペースキーを使いこなす前に日本語配列が使いこなせていないのだ。かっこを入力しようとしたら毎回閉じかっこが入力されるし、日本語入力をオン/オフする際もAltキーが小さくて打ちづらい。いや、よく考えたら日本語配列なのだから、半角/全角キーを押すだけでいいじゃないか。 しかも、ヒートマップから判断した時には右スペースキーの利用頻度が高いと思ったのだが、英文やプログラムコードを打つときには左スペースキーを使っていることが判明した。どうやら右スペースキーを変換キーとして、左スペースキーをスペース入力として使っているらしい。なんだその癖は。 では、左スペースキーをFnキーに割り当てるのはどうだろうか。Fnキー+右矢印キーでHomeというのは、ノートPCなどでも見掛けるキーアサインだ。これで薬指をホームポジションから離してしまうことも減るのではないか、と思ったものの、そうはならなかった。バックスペースキー同様、Homeキーを押す事に慣れてしまっているため、スペースキーがスペースとして反応しないデメリットの方ばかりが出てしまった。 その後も他のキー割り当てを試してはみたものの、この「右も左も使っている」という癖がなかなか打開できず、どれもこれも中途半端な結果になった。「ずっとこのキーボードを使い続ける」と決意したのであればともかく、試作機をお借りしている状況では、自分自身のオプティマイズにも限界がある。 やれやれ。仕方がない。筆者には使いこなせないが、変な癖が付いていない日本語配列ユーザーや、変化に適応できる柔軟性を持った若人たちに向けてもう少し活用方法を掘り下げていこう。