ネット民は「コンテンツがひどい」と訳知り顔で文句を言うが…制作者が語る、大炎上した「都庁プロジェクションマッピング」の実態
コンテンツは世界レベル
コンテンツに文句をいうネット民が多いことに触れると、石多氏は苦笑いした。 「都庁舎での実施はギネス世界記録に認定されるスケールであり、まさに世界中から注目を集める企画になることはわかっていました。ですので、プロジェクションマッピングとしてのツボを押さえ、質の高い映像を作れるということは外せない条件でした。世界中の方々の目に晒されても恥ずかしくないクオリティのものを作りたいと考え、プロデュースしています」 石多氏自身、プロジェクションマッピングの国際大会を長年手がけ、世界各国の大会で審査員を務めている。 「そうした観点やクリエイターとのつながりから、いい作品を作れるクリエイターをアサインさせてもらっています」 つまり、今、集められる超一流のクリエイターを集めたということだ。 「一番最初の基軸となったのは「TOKYO CONCERTO」という3楽章で1つになる作品です。この企画のマスターピースとして、長く愛される、何度も見たいと思える作品を作ろうと考えました。そして映像の内容も3楽章それぞれで異なるクリエイターに手がけてもらい、幅広い人の感性に響くような構成にしています。映像は違う作者ですが、全チームで内容を共有し、それぞれの楽章の連携をはかっていますし、また音楽を一人の作曲家が制作することで、全体を通して1つの筋が通った作品として成立するようにしています」 映像制作は日本だけではなく、カナダ、タイの3チームが参画した。いずれもさまざまな国際大会での受賞歴があり、世界的に認められている。 「この3組と音楽家と制作の過程で何度もディスカッションし、それぞれの進行を共有し合い、時にはデータの交換をするなどして、全体のまとまりはどんどん強くなっていきました。冒頭は太陽が迫り上がる神話の世界観から始まるのですが、最後はまた太陽が昇って終わるという普遍性を表す演出にしています。最終的には本当にいい作品になったと自負しています」 他にもさまざまな課題があった。平日の夜は都庁舎の窓の多くの明かりがついてその条件下でも成立するコンテンツを作る必要があった。 「窓を避けて壁面のみを使うように作ることを意識しています。コンテンツ「Evolution」と「Synergy」はベルギー人のクリエイターに制作してもらっていますが、やはり多くのプロジェクションマッピングを制作した実績を持っている人物です」 休日は映写環境に合わせて見栄えのするコンテンツを中心に設計し、平日は都庁をシンボリックに描きながら、機能性を持った演出を考えて全体の設計をしたとのこと。 「ですので休日(土日祝日)でも平日でも満足していただけるよう、いま色々と試行錯誤しながらコンテンツとして成立する内容を作っています」 他にもAIを使ったコンテンツをドイツ人のクリエイターが手掛けたり、パリオリンピックの時は東京とパリをつなぐアーティスティックな作品をフランス人のYann Ngemaという世界的なクリエイターが手がけている。エッフェル塔と東京タワーという両シンボルの関係性を生かしたコンテンツを発表した。