「アートウィーク東京」いよいよ11月7日から開催!ディレクター蜷川敦子が創設の狙いと今年の見どころを語る
都内50カ所以上のアートスペースをシャトルバスでつなぎ、多様な観客に向けたプログラムを展開する年に一度の国際的なアートイベント「アートウィーク東京」が、11月7日~10日に開催される。同イベントの背景と狙い、今年の注目ポイントを、その共同創設者・ディレクターで、ギャラリー「Take Ninagawa」代表の蜷川敦子氏に聞いた 「アートウィーク東京」開催地や出展作品ほか(写真)
シェアを通じて、アートのエコシステムを健やかにする
「アートウィーク東京」(以下、AWT)は、2021年のプレ開催を経て、2022年より毎年開催されている国際的なアートイベントだ。 六本木の森美術館や国立新美術館、銀座メゾンエルメス フォーラムといった都心の美術館・施設から新進ギャラリーまで、東京のアートスペース50カ所以上を無料のシャトルバスで接続。人々の移動性と見通しを高め、コレクターや親子連れなど多様な層に向けたプログラムを展開することで、幅広い観客と東京の現代アートシーンの「今」の接点を創出してきた。 スイスのバーゼルほかで毎年行われる世界最大級のアートフェア「アートバーゼル」との提携でも注目され、2023年は4日間の期間に国内外から4万3000⼈が訪れている。 そんなAWTが、今年も11月7日~10日に開催される。第3回目の今回は、過去最多53カ所のアートスペースが参加。「買える展覧会」がコンセプトの「AWT FOCUS」といった従来の独自プログラムに加え、世界的建築家と企画する建築ツアーなど新しい試みも追加された。より多角的になった内容で、東京のアートシーンに関心を持つ参加者を迎える。 ──AWTの構想は、どのような問題意識から生まれたのでしょうか? 蜷川:AWTの背景のひとつには、コロナ禍で国際的なアートのディスコース(言説)が日本国内に届きにくくなった状況がありました。国際展やアートフェアがなくなり、人々の移動が制限されるなかで、グローバルに共有される価値が見えづらくなり、世界との断絶がアートマーケットでもみられるようになりました。 そもそも、こうしたアートのマーケットの問題は、コロナ禍以前からアートワールドの主な議題のひとつでした。アートのエコシステムが崩れ、若手から中堅、さらにはすでに地位を確立している老舗のギャラリーまでもが苦しんでいるなか、いかに従来のエコシステムを守り、健全なアートマーケットを作るかが議論されてきたのです。もちろんこれは喫緊の課題でしたが、コロナ前にはなかなか問題に取り組む時間の余裕がなかった。ただ、コロナ禍で自分の時間ができたことに加え、国際的なギャラリーが集まるオンラインミーティングに毎週参加したことで、第一線のギャラリストたちが抱える共通の課題を再認識できました。そうしたグローバルな問題には、まずはそれぞれがローカルに取り組むことが有効ではないか? そう考え、第一歩として東京で動き始めたことがAWTにつながったのです。