不思議と涙を誘われる「漫画家・矢部太郎さん初の大規模展覧会」
矢部さんだから描ける、やさしいアクリル画
後半にかけて通路には、矢部さんがこの展示のために描き下ろした"約100点"のアクリル原画が並びます。約100点というのは、最初に草刈さんとの間でそう決めたものの、まだ達していないため数えないことにしているとか...。 アクリル絵の具で描く機会は、これまであまりなく「初めてに近い」と話す矢部さん。やさしさが具現化したような、ため息が出るほど素敵な絵の数々を見ることをできます。 通路を突き当たると図録のために描き下ろした『昼寝姫』がちら読みできます。担当編集の方に自由に描かせてもらえたという矢部さんは「最高傑作です」と嬉しそうにこぼしました。来場者へのお土産にはなんと、昼寝姫のシールがあるというので、図録とともに楽しめそうです。
矢部さんが提案した唯一の展示も
最後の部屋には、現在連載中の作品、3月に新刊として出たばかりの『プレゼントでできている』など3作品を部分的に紹介されています。中でも『プレゼントでできている』の内容に出てくる、ヨガの先生からもらった"人物像"や、タクシー運転手さんにもらった"期限が1年前の50円割引券"の展示が矢部さんのおすすめだそう。 通路にぽつんと立った古い電話は、『大家さんと僕』に出てくるシーンをイメージして矢部さんが提案したもの。電話を取ると矢部さんが語りかけてくれるのを聴くことができ、5パターン用意されているといいます。(ちなみに編集部・片平が取ったときは、矢部さんの優しい「もしもし~」でした。他のパターンも聴いてみたい!) 締めくくりに、これまでの作品が一挙に並んだ光景について問われると、 「けっこう描いてたんだなあと思いました。漫画って1コマ1コマ描いては次を描くから、あまり振り返らないので、改めて作品を並べてみて"大作家なんだなあ"と思いました笑」(矢部さん) と語り、場を和ませました。
PHPオンライン編集部