政府がPRする「マイナ保険証のメリット」は“ミスリード”? 14名の弁護士が指摘…見落とされている「5つの法的問題」とは
「デジタル化の目的」に反するとの指摘
また、マイナ保険証への一本化が、デジタル化の目的に反することも指摘された。 小島弁護士:「本来、デジタル化は、誰もが便利になるようにするためのものだ。 その目的のなかには当然、デジタル化の中で取り残される人、困る人がないようにすることも含まれる。 マイナ保険証に一本化して、現行の健康保険証を廃止するとなると、これまでプラスチックまたは紙の保険証があれば医療サービスを受けられた人が不利益をこうむり、極めて大きな問題が発生する。これはデジタル化の目的にも反する」 現状では、マイナンバーカードを持たない人や、持っていても健康保険証との紐づけをしていない人もいる。そこで、当面の間、「資格確認書」が交付されることが決まっている。しかし、小島弁護士は、このしくみについても問題が大きいという。 まず、マイナ保険証に統合していない人が事実上、被保険者の資格確認を受ける手段を失うリスクが生じると指摘する。 小島弁護士:「従来、健康保険証が自動的に送られるしくみがとられているのに、それが送られてこなくなる。 法令上、『資格確認書』を交付してもらうには自分から申請しなければならなくなる。 いざ病気にかかった時になって申請を出しても、間に合わない可能性がある。そういう人は非常に困ることになるので、不都合を回避するためにも『資格確認書』は申請の有無にかかわらず全員に発行するという制度にすべきだ。 ただし、そうなると、健康保険証を廃止せず残せばいいことになる」
市区町村の事務負担・費用負担増大の問題
それに加え、「マイナ保険証」と「資格確認書」の「二本立て」となれば、事務負担や費用負担が著しく増大すると指摘する。 小島弁護士:「法令上、『資格確認書』の発行は、マイナ保険証に紐づけしていない保険加入者に限って、かつその保険加入者の求めに応じて、行われることとされている。 他方で、マイナ保険証にしている人には『資格確認のお知らせ』という紙を発行することになっている。 しかし、『資格確認書』『資格確認のお知らせ』の発行事務を担当する市区町村は、誰がマイナ保険証への統合をしていて、誰が統合していないかの情報を持っていない。 もし国から情報の提供を受けられたとしても、これまで機械的に全員に健康保険証を送っていたものを、2通りに区別して送らなければならないので、システムの改修に費用がかかり、事務負担も煩雑になる」
【関連記事】
- マイナ保険証“強制”の「法的欠陥」とは? “1415人の医師・歯科医師”が国を訴えた「行政訴訟」が結審、11月判決へ
- 防衛省と外務省の職員は「マイナ保険証」が“嫌い”?…自治体でもほとんど活用されず、会計検査院にも「ムダ」と烙印を押された理由とは
- マイナ保険証「一本化」は“個人情報のリスク増大”や“憲法違反”の問題も?…専門家が警告「それでも強行することの危険性」とは
- マイナ保険証へ「一本化」は“医療の質の低下”と“税金の無駄遣い”を招く? 専門家が警鐘…“現場”で続発する「不都合な事態」とは
- マイナ保険証「トラブルによる死亡例」も 医師が語る“現場で起きている弊害”と“国民が知らされていないリスク”