政府がPRする「マイナ保険証のメリット」は“ミスリード”? 14名の弁護士が指摘…見落とされている「5つの法的問題」とは
人権保障・民主主義を“根底から”揺るがす「憲法41条違反」
このうち、「【問題点④】国会中心立法の原則(憲法41条)違反」については、その重大性が弁護士等の法曹関係者や法学部生等以外の人にとってイメージしにくいかもしれない。 小島弁護士は、国民の人権保障と民主主義・三権分立の観点から、憲法41条の重要性を説明した。 小島弁護士:「中世以前の政治体制では、 君主が『お前はこうしろ』と決めれば国民の権利義務を変動させることができてしまっていた。それでは人権が著しく侵害される。 憲法41条は、そのようなことがないように、国民の権利を制限し義務を課するには、国会という選挙で選ばれた国民の代表がいる場でしっかり議論をして、『法律』という形で定めなければならないとしたものだ。 そういう形になっているのに、国会で法律を制定するプロセスを経ずに、政府が勝手に『閣議決定』『省令』で義務を課するのは、民主主義・三権分立を根底から揺るがすものであり、きわめて大きな問題だ」 なお、補足すると、国会中心立法の原則の例外として、法律による政令・省令等への「委任」は認められている。しかし、判例・学説上、その委任の程度は一般的・抽象的なものでは足りず、「相当程度、個別具体的」なものであることが要求されている(最高裁昭和49年(1974年)11月6日判決等参照)。
誤解を招く政府の「マイナ保険証のメリット」の説明
続いて、小島弁護士は、政府が公式にPRするマイナ保険証のメリットとされる「医療DX」の実現にとって、マイナ保険証が必須ではないことを指摘した。 厚生労働省のマイナ保険証の解説ページ「マイナンバーカードの健康保険証利用について」を見ると、以下のように記載されている。 「顔認証付きカードリーダーを利用することで、これまでよりも正確な本人確認や過去の医療情報の提供に関する同意取得等を行うことができ、より良い医療を受けることができます」 小島弁護士:「マイナ保険証はあくまでも被保険者であることの資格確認のために使用されるだけのもの。 医療機関への医療情報の提供は、資格確認に続いて行われる医療情報の提供に関する『同意確認』で同意した場合に発生する効果にすぎない。そのためにマイナ保険証は必須とはいえない。 また、医療情報はマイナンバーカードでアクセスする『マイナポータル』に記録されているわけではない。同意によって、医療機関が保有する電子カルテ情報にアクセスできるようになるだけだ。マイナ保険証である必要はない。 政府がそれを『マイナ保険証の効果』として説明するのは、誤解を招くものだ」
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