パワーカップル熱視線、新興・私立小の正体 「金ぴか御三家」と何が違う
富裕層は収入源などによって、いくつかのパターンに分類される。今どきの富裕層の象徴と言えば「パワーカップル」。世帯年収や好むブランドなど、その“生態”について注目されがちだ。富裕層がお金を惜しまない教育について、彼らの参戦が大きな変化をもたらしている。 【関連画像】慶応義塾幼稚舎は志願者の絶対数こそ減っているが、24年度の首都圏私立小学校・志願者数ランキング(男女合計)では首位(画像/PIXTA) ※日経トレンディ2024年11月号の記事を再構成(24年11月1日に最新号の12月号を発売) 今どきの富裕層の教育トレンドを探るに当たって、まず注目したいのが、私立小学校の志願者数だ。1都4県の私立小学校志願者総数データを見ると、少子化が深刻化する中でも、右肩上がりの傾向にある。 私立小学校に子供を通わせる親の世帯年収は、1200万円以上が過半数(文部科学省「21年度 子供の学習費調査」による)。同調査は2年ごとに実施されるが、この世帯の比率は年々高まっている。 世帯年収1200万円以上と聞いて頭に浮かぶのが、一説では夫婦共に年収700万円以上と定義されるパワーカップルだ。ニッセイ基礎研究所の調査結果によれば、パワーカップルはこの10年間でほぼ2倍に増えたという(24年4月発表のニッセイ基礎研究所の「パワーカップル世帯の動向」によれば、13年は21万世帯で、23年は40万世帯)。 この今どき富裕層が、私立小学校の受験競争になだれ打ってきた構図が浮かび上がる。 では、こうしたパワーカップルは我が子をどんな私立小学校に入れようとしているのか。取材を進めると、従来の富裕層とは明らかに異なる志向が見えてきた。 ●なぜ「給食のおいしい学校」が人気なのか 父親に莫大な収入や資産があり、母親は教育熱心な専業主婦。そんな“典型的”な富裕層だけが子供を私立小学校に通わせるのではなく、年々増えるパワーカップルも受験競争に参戦――。その結果として、私立小学校の志願者数が増加傾向にある中、人気校の傾向にも地殻変動が起きている。 小学校受験の情報サイト「お受験じょうほう」を運営するバレクセル代表の野倉学氏は、「今や私立小学校受験者の6~7割が共働き世帯」と説明した上で、こう続ける。 「パワーカップルは、教育には熱心だが、塾や習い事の送り迎えなどにかける時間が確保しづらい。そのため、面倒見がよく、既定の授業に加えて、多種多様な教育機会を我が子に与えられる私立小学校に近年、注目が集まっている」(野倉氏) 代表格が、19年に開校した東京農業大学稲花小学校(東京・世田谷)だ。 同校は、入学直後から給食制(原則週5日)の6~7時限授業を実施。公立小学校と比べると、授業時間が長い。 さらに、学校が委託するNPO法人が運営し、校舎内で最長午後7時まで子供を預かる「アフタースクール」もある。専門の講師などが、運動や音楽、学習など多様な活動プログラムを提供するとしており、一般的な学童保育とは一線を画している。 「教育内容が手取り足取りで充実している上に、子供が小さいうちからある程度、保護者が子育てに手をかけずに済む点が、パワーカップルの支持を集めている。おいしいと評判の給食も受けが良い。毎日の弁当を作る時間はないけれど、子供にはおいしい食事を食べてほしいと考える保護者も支持している」(野倉氏)