生成AIへの期待と幻滅が“同居”--ガートナーがCIOに提示した生成AIの導入定着策
生成AIで生まれる好意や嫉妬心 最後の「行動」の観点をDemetriou氏が解説した。同氏は、「生成AI=マシン」がテクノロジーやツールといった存在から「チームメイト」になる時代が到来し、人間が生成AIに対して感情的な反応を示すようになるだろうと説く。 同社の調査では、AIや生成AIが従業員の福利に与える悪影響の軽減に努めている企業が世界で20%、日本でも10%にとどまった。また、従業員のニーズや感情に対するAIの影響を調査しているとしたCIOが世界で47%、日本で31%だった。 「例えば、コールセンターで入社間もないオペレーターが生成AIを利用してベテラン並みの顧客対応を実現したとする。その生成AIは、ベテランの経験を学習して開発されたのかもしれない。ベテランのオペレーターは嫉妬心を抱くことになるだろう。人事担当者は、そうした状況をきちんと管理できるだろうか」(Demetriou氏) Demetriou氏は、企業や組織が生成AIのテクノロジーとしての効果を獲得する上では、従業員など人に与えかねない影響にも配慮すべきだと指摘する。そこでAIと人や組織の行動を適切な形にしていくためのオーナーシップが必要になってくるという。 「AIの真価を引き出すためには、テクノロジーの導入に対する人のマインドセットを変革することが重要になる。ここでは従業員同士の(テクノロジーの効果を適切に引き出すための)共創を促していかなければならない」(Demetriou氏) Demetriou氏は、既に生成AIが人間に代わって人間のように人間を相手にするシーンが出現しているとも指摘する。例えば、人材採用では、採用担当者に代わってAIのエージェントボットが応募者とチャットで面談し、採用にかなう人材であるかどうかをある程度判定する。AIのエージェントボットは、面接時における応募者の反応から感情などをデータとしても測定する。 採用担当者は、ツールやデータなどを活用して採用業務を効率化できるが、応募者側の感情にはどう影響するだろうか――Demetriou氏は、テクノロジーの導入や活用においては人間らしさも大事にすべきだと述べ、生成AIの促進において、心理学や行動学といった人間の行動に詳しい専門家を巻き込むことがポイントになると指摘した。 ここで「堅実なAI」のペースを志向する企業や組織では、「変革の管理を(組織や人に)適応させること」や「(テクノロジー活用による)従業員体験を共創すること」が必須だとし、「加速的なAI」のペースを志向する企業や組織ではさらに、「人の行動の専門家を加えること」と「(人に代わり応対する)エージェント型AIを試すこと」も不可欠だとした。