木村花さん「テラスハウス」問題にBPO見解 放送倫理上問題あるも人権侵害認められず
BPO「放送界全体に自主的な取り組みを期待」
響子さんが番組の過剰な編集や演出に問題があり、人権侵害があったと指摘したことについて「決定の概要」と題された文章の中で「人権侵害については3点の判断を行った」と説明。 第1に「本件放送自体による、視聴者の行為を介した人権侵害」の責任があるとの主張については表現の自由との関係で問題があり一般論としてはこうした主張は受け入れられないと前置きし、「ただ、本件では、先行するNetflix配信が誹謗中傷を招き、自傷行為という重大な結果を招いたという特殊性がある。このような場合においては、少なくとも、先行する放送ないし配信によって本件の自傷行為のような重大な被害が生じている場合、それを認識しながら特段の対応をすることなく漫然と実質的に同一の内容を放送・配信することは、具体的な被害が予見可能であるのにあえてそうした被害をもたらす行為をしたものとして、人権侵害の責任が生じうるものと考えられる」としたが、この件に関しては「自傷行為後にフジテレビ側は一定のケア対応をしており、また、本件放送を行う前にも一定の慎重さをもって判断がなされたため、漫然と本件放送を決定したものとはいえず、人権侵害があったとまでは断定できない」とした。 第2に、同番組における花さんの言動は一方的な「同意書兼誓約書」の威嚇のもと、煽りや指示によってなされたものであり、自己決定権や人格権の侵害があるとの響子さん側の主張に対し見解を説明。それによると「若者であるとはいえ成人である出演者が自由意思で応募して出演している番組制作の過程で、制作スタッフからなされた指示が違法性を帯びることは、自由な意思決定の余地が事実上奪われているような例外的な場合である。本件では、制作スタッフからの強い影響力が及んでいたことは想像に難くないが、上記のような例外的な場合にあったとはいえず、自己決定権等の侵害は認められない」としている。 第3に、フジテレビの検証が内部調査にとどまった点に関しては「番組による人権侵害等を判断する委員会の基本的任務とは距離があり、本決定では判断を行わない」とした。 放送倫理上の問題はあるものの人権侵害までは認められないという見解だが、「決定の概要」の最後に「リアリティ番組の制作・放送を行うに当たっての体制の問題を、課題として指摘せざるを得ない」として、「本決定を真摯に受け止めた上で、フジテレビが木村氏の死去後に自ら定める対策を着実に実施し、その効果の不断の検証を踏まえて改善を続けるなどして再発防止に努めるとともに、本決定の主旨を放送するよう要望する。同時に、放送界全体が本件及び本決定から教訓を汲み取り、木村花氏に起こったような悲劇が二度と起こらないよう、自主的な取り組みを進めるよう期待する」と概要に関する発表文を閉じている。 なお同日、響子さんは会見を開き、ネット上の誹謗中傷・プライバシー侵害をなくすため支援金を集めて苦しむ人たちを助けるNPO法人「REMEMBER HANA(リメンバーハナ)」の設立(準備中)を発表した。 (文:志和浩司) ■問題となった番組内容 2020年5月19日にフジテレビで放送された「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」の番組中盤で、共演者の一人が花さんの高価な試合用コスチュームを誤って洗濯した結果、縮んで使用不可能となり花さんが怒って抗議、その共演者の帽子を取って投げ捨てるシーンがあった。いわゆる「コスチューム事件」と呼ばれ、これが誹謗中傷を呼ぶ大きなきっかけとなった。この番組は最初3月31日にNetflixで配信されて誹謗中傷が始まり、その後、花さんは自傷行為をSNSに投稿するなどしていたが、5月14日には花さんが自身の主張の正当性をうったえるかのような動画がYouTubeで公開され、さらに誹謗中傷を煽る結果となった。そして5月19日にフジテレビ地上波放送で同番組の放送が行われた。