映画「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー」 3人のゲストによる座談会
人間活動と両立させた「ガリアーノ劇場」をもう一度
F:ガリアーノはもうお酒も飲まず、パーティもしないそうです。今後の彼にどんな活動を期待しますか? シトウ:ガリアーノに「シャネル(CHANEL)」に行ってほしい。クリエイションはもちろんだけど、マルジェラと違ってシャネルならショーの最後に出られると思うので、それは見てみたいな。 都築:もう一度「ガリアーノを見に来る」という流れのショーを見てみたいですよね。 ドリアン:私はこの作品を見たら「もうゆっくりやんな」と思ってしまいました。パートナーと海を見ている表情が本当に穏やかだったから「あんたはよく頑張った(涙)。もう個人のブランドでほどほどにやってくれればいいよ」って。 F:宇多田ヒカルさんの「人間活動」のように、アーティストにも人としての時間が必要ですよね(※2010年から長期休養に入る際、「人間活動に専念する」と発表した)。 都築:確かに。ブランドから「出てよ」と頼まれてやるんじゃなくて、その穏やかな生活の中で何かをきっかけに「もう一度、俺出ようかな」と思ってやる「ガリアーノ劇場」は見てみたい。 ドリアン:世界はガリアーノにクチュールを求めているんじゃないの? シトウ:そうだよね。クチュールだけやってもらって、ほかはデザイナーを立ててもらって。 ドリアン:分業制にしましょうよ、そのほうがほかの人にチャンスも渡るし。今64歳ならまだいろいろできるなー。どこかの国の国立歌劇団の衣装とかも見てみたい。 シトウ:それがいい! 人間としての幸せを見つけてヘルシーに過ごした上で、やりたいことをやってほしい。 ドリアン:ガリアーノがやりたそうなものってなんだろう......。それこそアナ・ウィンターのお葬式のプロデュースとか? 一同:(苦笑) F:今後「次なるガリアーノ」が生まれたら世界はどうなるでしょうか。 都築:欲を言うと、そんなデザイナーが日本から出てきたら自分は一番うれしいです。 ドリアン:そういう人が出てきたときに、また助けてあげられるような懐の広い業界であってほしいですね。ちょっとやそっとの「やらかし」は大目に見てほしい。余白や余裕って大切よ。余白がある世界だからこそ、こういうファッションが楽しめるんです。 都築:今日はシトウさんとドリアンさんとご一緒するから、僕も久々に遊び心でスタイリングを組んでみようと思って。真夏にファーのダウンベストなんて「帰りに駅のトイレで絶対タンクトップに着替えるわ」と思ったし、腕時計2個とか本当に無意味だけど(笑)。僕の中ではこの映画を見て、意味があって選んだ部分があるんです。別にだれに伝わるわけでもない、そんな個人の発想がちゃんと愛をもって尊重される世界になればうれしいです。 ドリアン:それがダイバーシティよ。みんな好きな服を着ましょうよ! 一同:はい!!!!