「走行距離が多い=好選手」ではない。ロドリが“走る”のは正しいポジションを取るインテリジェンスがあるからこそ【コラム】
走行距離が多い選手が「優れている」というのは幻想
走行距離のようなデータが、未だにもてはやされている。その数字は、一つの参考になるだろう。しかし、そこで上回っても、勝利には直結しない。実際、走行距離で上回っても負けることはしばしばあるし、勝敗の決め手にはならないのだ。 【動画】名将ペップがベンチを蹴り飛ばして怒り狂う! 同じく、走行距離が多い選手が「優れている」というのも幻想である。 サッカーを知らない人でも、数字はわかりやすく伝わって、嘘をつかないように思える。たしかに、走れる選手は走れない選手よりもアドバンテージを取れるだろう。多く走れている選手の方が、「戦えている」という印象になる。 例えば、「世界最高のMF」と言われるスペイン代表のロドリは、マンチェスター・シティで「走れる選手」であることを示している。走れるスタミナは、言うまでもなく悪いことではない。特に中盤は、どうしても走力が必要になるだろう。 しかしながら、走行距離の多さ=好選手とは結びつかない。 いくら走っていても、正しいポジションが取れない選手は、評価を受けない。いるべき選手に留まれず、脊髄反射的にボールをハントしに動いてしまう。そんなMFは、スペースを明け渡すことでチームを死地に追いやっている。 ロドリの走行距離が増えるのは、あくまで正しいポジションを完璧に取るため、ひたすら足を動かしているからである。チームメイトを動かしながら、自らも動く。そのポジション感覚の中で、適切にボールを動かし、アドバンテージを取れるし、失った後も、守備の態勢がとれているのだ。 つまり、そのインテリジェンスこそ、最も求められる要素と言える。どこでボールを受け、どこにボールを差し込み、どのタイミングだったらアドバンテージを与えられるか。それを自らが動きながら知っている選手こそ、尊ばれるべきである。その知性もなく、ただ走り回っても世界には通じない。 「首を飛ばされたニワトリ」 スペインでは、ただ走り回る選手を残酷な表現で呼ぶ。 ロドリは、動くべきではないときには動かずにいられる。判断のインテリジェンスこそ、彼を一流にしている。 例えばMFを語る場合、走行距離に合わせて、「インターセプト数」もしばしば俎上に乗せられるが、インターセプトは周りを動かしながら、自らも正しいポジションを取ることによって、誘い込んで奪うのが上策である。高いレベルのサッカーでは、一人でボールを奪い取るのは難しく、下策と言える。なぜなら、たとえインターセプトできたとしても、失点のリスクを生じさせているからだ。 「ポジション保全」 その感覚がないMFは、どれだけ長い距離を走ろうとも、世界のトップレベルには辿り着かないのだ。 文●小宮良之 【著者プロフィール】 こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。
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