「盗撮ハンター」、警備員や私服警察かたり各地で現金要求…「300万円払えば被害申告しない」
福岡市・天神の商業施設で今年9月、警備員や盗撮被害者の父親をかたった男ら2人が、スマートフォンで動画撮影していた男性から「盗撮」の示談金名目で100万円を詐取したとして詐欺容疑で逮捕され、今月20日に有罪判決を受けた。撮影者に「盗撮」と因縁をつけて金をだまし取るこうした手口はSNS上などで「盗撮ハンター」と呼ばれ、被害が相次いでおり、警察当局は警戒を強化している。(相良悠奨、水木智)
「動画、撮ってますよね」
9月中旬、福岡市・天神の商業施設のアニメグッズ店に並ぶ商品をスマホで動画撮影していた50歳代男性客に、警備員を名乗る大柄な男が突然声をかけた。
男は広島市の会社員の男(32)。判決などによると、男は、男性に「盗撮被害を受けた女性が被害届の提出を検討している」などと言い、男の兄で、女性の父を名乗る同市の会社員(34)に電話。兄は男性に「300万円を払えば被害申告をしない」と言って示談金を求め、男性は100万円を手渡した。
男性はさらに200万円を求められたため警察に相談したところ、兄弟のうそが発覚。2人は詐欺容疑で逮捕、起訴された。同様の手口で40歳代の別の男性からも約17万円を詐取したとして詐欺罪で追起訴された。
弟の被告は4日に福岡地裁で行われた公判の被告人質問で、経営する会社の経営状態が悪化し、「(犯罪が疑われるなどとして人を取り押さえる動画を流す)私人逮捕系のユーチューブを参考にし、稼ごうと思って人の多い福岡を選んだ」などと説明した。また、事件前には福岡県内にマンションを借りて商業施設で1日中張り込むなどし、「声をかけられそうな人を探していた」と供述。「何もしていない人をだますより、犯罪に近いことをしている人をだます方が罪悪感が薄れる気がした」と述べた。
福岡県警によると、100万円を詐取された50歳代男性はアニメグッズを撮っていただけだった一方、約17万円をだまし取られた40歳代男性は天神の商業施設で前方を歩いていた女性の後ろ姿を撮影しており、男性は事件後も警察には相談していなかった。捜査関係者は「後ろめたさがあったのでは」とみる。